クラシック 未知との遭遇
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2024/04/15 (月)  春のクラシック楽曲のやぶにらみ的考察
2024/03/11 (月)  中島みゆきコンサート「歌会VOL.1」〜超私的レポート
2024/02/15 (木)  「ZENさんのぶらり音楽の旅」という本
2024/01/17 (水)  新年所感〜メサイア出現を待望する
2023/12/10 (日)  12月 雑感〜吾が今年の漢字は「失」
2023/11/15 (水)  松岡三恵CD復刻の顛末
2023/10/12 (木)  田畑圭一郎くん、安らかに
2023/09/10 (日)  地球沸騰の夏にウクライナを想う
2023/08/16 (水)  若大将・加山雄三の「音楽はみんなともだち」〜似たもの楽曲ア・ラ・カ・ル・ト
2023/07/13 (木)  ちょっと変!? 流行歌の歌詞いろいろ

2008年5月〜2023年6月のコラム
 2024.04.15 (月)  春のクラシック楽曲のやぶにらみ的考察
 去年の桜は早すぎて、せっかく出かけた弘前城や角館が葉桜になっており残念な思いをしたものですが、今年は普通に戻りました。やはり、桜の下での入学式、桜花賞はいいものです。そしてMLB、NPBの開幕、マスターズ開催とやはり春到来はウキウキします。
 この春暗雲垂れ込めた水原一平氏の違法賭博問題も、4月11日、米連邦検察が「水原氏の送金は24億5000万円に上り、詐欺容疑で訴追した。大谷選手が関与していたことを示す証拠はなく、彼は被害者とみられる」との見解を発表しました。額の莫大さに唖然としたものの、大谷選手の潔白は証明されたわけで、まずは一安心。あとはドジャースのワールド・シリーズ制覇に向けて突き進んでほしいものです。

 今回は、春に因んだ楽曲をクラ未知的斜視的角度から考察してみましょう。

(1)「春の声」〜ヨハン・シュトラウス2世

 ワルツ「春の声」。この曲の誕生は実にユニーク。ピアノの魔術師 フランツ・リストが関係しているんですね。1883年、ヨハン・シュトラウス2世がオペレッタ「愉快な戦争」の初演のためブダペストに滞在していた折、旧知の間柄のリストとパーティーを開き、そこで互いが勝手気ままに演奏し合って生まれたのが「春の声」でした。その年の暮、歌詞がつけられてウィーンで初演。大喝采を浴びました。華やかなサロンと3度目の結婚を控えたシュトラウスの幸福感が反映して、明るく躍動感に満ち、まさに春到来を思わせる楽曲です。
 この心躍る楽曲は映画「男はつらいよ」にも何度か登場します。第8作「寅次郎恋歌」では、マドンナ池内淳子演じる未亡人貴子さんの一人息子学くんが、転校後間もないため友達ができないのを見兼ねた寅さんが、江戸川の川原で一緒に遊んでやって友達作りに一役買う。そんな場面で流れていました。我が子に友達ができて喜ぶ池内さんの自然な演技がとても印象的でした。そうです、親というもの、子供に友達ができることが何よりもうれしいのです。シリーズ「男はつらいよ」は本作で初めて100万人動員を果たし、翌1972年からは盆暮れ年2回公開が定着します。
 「春の声」はこの後、第9作「柴又慕情」、第30作「花も嵐も寅次郎」、第41作「寅次郎心の旅路」にも登場。合計4回も使われています。これはシリーズ48作中最大の頻度。山田監督一番のお気に入り曲といえるでしょう。これに続いては「トロイメライ」(シューマン作曲)が3回となっています。

 正月恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでは1987年の演奏が圧巻でした。指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン。人気上昇中のソプラノ歌手キャスリーン・バトルをソリストに登用、「春の声」本来の姿で演奏されました。流石カラヤン、筋が通ったエンターテインメントでした。私の記憶では、ニューイヤーの歌手のゲスト出演はこれが最初で最後かと思います。ウィーンフィル・ニューイヤーではこれ以降、指揮者が毎年入れ替わるのが恒例となります。
 日本の国民的映画「男はつらいよ」と世界のクラシックファン垂涎のウィーンフィル・ニューイヤーコンサート。この2大行事の恒例化に「春の声」が関与(?)していたのは面白い偶然といえるかもしれません。
 因みに、キャスリーン・バトルは技量/容姿兼ね備えた抜群のスター性の持ち主。創美企画時代、彼女が歌うニッカ・ウィスキーのCM「オンブラ・マイ・フ」をフィーチャーしたLD「DIVA」をリリース。発足間もない新会社の売り上げに大いに寄与しました。これも懐かしい思い出です。

(2)ドビュッシーの「春のロンド」

 「春のロンド」はドビュッシー「管弦楽のための映像」の終曲。スコットランド風の「ジーグ」、スペイン風の「イベリア」に続く第3曲がフランス風の「春のロンド」というわけです。「ロンド」は「輪舞曲」と訳され、その名の通りメインの旋律が何度も現れる闊達な舞曲風楽曲形式で、ベートーヴェンやチャイコフスキーのコンチェルトの終楽章を華やかに飾っています。が、そんなイメージでこのドビュッシー「春のロンド」を聴くと肩透かしを食らうことになります。まず、主要主題がフランスの童謡「もう森へは行かない」に基づく旋律なのですが、これが皆目掴めない。ロンドなので何度か出てくるはずですが、実に不明瞭。聴き馴れたドイツ的ロンドとは似ても似つかぬ、霧に覆われているような感覚なのです。ドイツ系音楽に慣らされた私のようなものはフランス的テイストに馴染めないのかもしれませんね。アルマ・マーラー著「グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想」によれば、1910年、交響曲第2番「復活」のパリ初演に参列したドビュッシーは第2楽章の途中で席を立ってこう言ったそうです。「マーラーの交響曲はあまりに異国的でスラヴ的だ」。これもフランス的とドイツ的の相容れなさの表象なのでしょうか。
 ドビュッシーの音楽には、形式的不明瞭さはあるものの、響きの“清涼感”は独特です。作家・立原正秋が「夏に聴く音楽はドビュッシーが一番」というのも理解できます。

 私の場合、「ロンド」と聞いてすぐ頭に浮かぶのは、モーツァルトのトルコ行進曲です。これはピアノ・ソナタK331の第3楽章なのですが、形式はロンド、表記は Alla Turca Allegretto(トルコ風アレグレット)となっています。形式的にはかなり自由で、これを「フランス風ロンド」という向きもあります。また、行進曲という表記はありませんが、左手が刻むリズムがトルコ軍の行進を表わしているということで昔から「トルコ行進曲」が通り相場となっています。
 これらはまあいいとして、興味深いのはAllegrettoという速度表記です。これは、Allegro(快速に)が、1分間に四分音符を120〜152刻む速度なのに対し、Allegretto(やや快速に)は96〜120なのです。

 そこで、今回、モーツァルト「トルコ行進曲」のMyコレクションから10枚のCDを選んで速度を算出することにしました。まず、楽譜から「トルコ行進曲」の小節数を数える。これを2倍して四分音符の数を算出する〜448個。これと各々のピアニストの演奏時間から速度を割り出し、遅い順に並べてみました。( ) 内数字は録音年。

ウラディミール・ホロヴィッツ(1968) ♩=107
グレン・グールド(1970) ♩=109
ワルター・ギーゼキング(1954) ♩=121
宮沢明子(1983) ♩=125
藤田真央 (2021) ♩=126
内田光子(1983) ♩=127
アンドラーシュ・シフ(1980) ♩=129
リリー・クラウス(1956) ♩=130
フリードリヒ・グルダ(1977) ♩=132
ウィルヘルム・バックハウス(1955) ♩=141

 以上、Allegrettoの速度(♩=96〜120)に収まっているのは、ホロヴィッツとグールドの二人だけということが判明しました。あとはすべてAllegroの速度となっており、おそらく現在はこの傾向が強いと思われます。因みに著名な行進曲の速度、例えば、スーザの「星条旗よ永遠なれ」は116、ヴェルディの歌劇「アイーダ」大行進曲は101としっかりAllegrettoの枠内に収まっています。やはり行進曲はAllegrettoがスタンダードということでしょうか。モーツァルトが行進曲という意味合いからAllegrettoとしたのなら、ホロヴィッツとグールドが最も作曲者の意図に忠実ということになりますね。また、10人中の最古参バックハウスが最速だったのは意外でした。
 「ロンド」を軸にドビュッシーからモーツァルトに跳んでみましたが、作曲者の意図をこんな角度から考察するのも楽しいものです。

(3)ワーグナー「冬の嵐は去りて」

 「冬の嵐は去りて」はワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」第1日「ワルキューレ」の第1幕でジークムントが歌うアリア。楽劇「ニーベルングの指環」は、序夜「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」の4夜16時間にわたって繰り広げられるワーグナー畢生の大作オペラです。神々/人間族/地底族が権力の象徴「指環」を巡って争い、やがて黄昏が世界を覆うという物語。ワーグナーはこれを作るにあたり、ゲルマンの英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」、北欧神話「エッダ」、アイスキュロスのギリシャ悲劇「オレステイア」等を参考にしたといわれています。「ニーベルンゲンの歌」はなんと無声映画があるようで、これはBrownie K氏からお借りすることになっていて、今からとても楽しみにしています。

 「冬の嵐は去りて」は第2日目から主人公として登場するジークフリートの父ジークムントが、母となる妹ジークリンデとめぐり逢い、「私こそが春」と溢れる思いを吐露する、ワーグナーらしからぬ(?)メロウ&メロディアスなアリアです。「冬の嵐は去り快い季節となった 柔らかな光に包まれ春は輝いている」と歌い始めるのですが、春Lenzという単語が代名詞を含め13回も出てきます。歌い終わったジークムントに向かってジークリンデは「そうです あなたこそが春なのです」と感涙の言葉を投げる。さすが fanatic & paranoid なワーグナーの濃厚さです。
 その昔「指環」を初めて聴いたとき、兄妹の結婚〜なんて妙な、といささか奇異の念に打たれましたが、我が国の天皇家の歴史を辿れば近親婚はさして珍しいことではなく、近頃では徐々に違和感がなくなってきています。

 以上、春のクラシック3曲を取り上げてみましたが、春楽曲は上記の他にも、ヴィヴァルディ「四季」〜「春」、モーツァルト「春への憧れ」、ベートーヴェン「スプリング・ソナタ」、メンデルスゾーン「春の歌」、シューマン:交響曲第1番「春」、マーラー「大地の歌」〜「春に酔える者」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、コープランド「アパラチアの春」等、数多あります。またいつか、これらの曲についても考えてみたいと思います。では今月はこの辺で。

<参考資料>>
最新名曲解説全集(音楽之友社)
新モーツァルト全集(ベーレンライター版)
映画「男はつらいよ第8作〜寅次郎恋歌」(1971年12月公開)DVD
CD「寅さんクラシック」(畑中隆一制作BMGビクター)
「グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想」(アルマ・マーラー著、石井宏訳 中公文庫)
CD「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート1987」
  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  キャスリーン・バトル(ソプラノ)
CDワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」〜「ワルキューレ第1幕」
  ハンス・クナッパーツブッシュ指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  セット・スヴァンホルム(テノール)、キルステン・フラグスタート(ソプラノ)1957録音
 2024.03.11 (月)  中島みゆきコンサート「歌会VOL.1」〜超私的レポート
 2月22日、東京国際フォーラム ホールA。待ちに待った中島みゆきコンサートに行ってきました。みゆきさんライブはいつも一緒のN.Yさん同伴で。前回の「2020ラスト・ツアー〜結果オーライ」が、コロナによるイベント自粛要請により、2月26日、大阪フェスティバル・ホール公演終了後に中断、今回は4年ぶりの開催でした。N.Y.さんは前回行っていますが、一緒に行く予定だった回は中断後だったので、私にとっては2018年の夜会以来6年ぶりのお目通りとなります。今回タイトルは変わって「歌会VOL.1
」。前回“ラスト・ツアー”と銘打ったのは「全国に出向く“ツアー”としてはラスト」という意味だそうで、単発のコンサートは今後も続けるそうです。“VOL.1”だものね。なので、当分、みゆきさんにはお目にかかることができそうで楽しみです。

 前回は、「アザミ嬢のララバイ」「悪女」「宙船」「最後の女神」「麦の唄」「慕情」「糸」など、ヒット曲、タイアップ曲が数多く並び、「ラスト・ツアー」に相応しい内容となっていました。そこへゆくと今回は、19曲中15曲が2000年以降の楽曲で、最新シングル「心音」もあり、その歌詞のように“未来へ”向かうみゆきさんの意欲がヒシヒシと伝わってくる構成でした。

 スタート曲「はじめまして」は、中断した前回ツアーのラスト曲。今回は、あの時の続きですよ というメッセージでしょう。それよりも何よりも、登場したみゆきさん、なんと眼鏡をかけていたのにはビックリ。心配したのは声でしたが、出だしはやや安定感に欠けたものの、進むにつれて張りある声がビンビン出てきて、心配は全くの杞憂に終わりました。

 2曲目「歌うことが許されなければ」は2020年のアルバム「CONTRALTO」から。「繰り返される戦いの日々 言葉は閉じこめられてゆく」という文言がありますが、この時点ではロシアのウクライナ侵攻はまだ。ロシアの言論統制とコロナによるライブ自粛を予見しているかのようです。みゆきさんの透視力でしょうか。

 これに続く「医療三部作」は前半の圧巻。「最近の報道を見ていると病院の映像がとても頻繁に出てくるような気がします。これまでこんなことがあったでしょうか」と前置きして、ドラマ「PICU小児集中治療室」主題歌「倶に」(AL「世界が違って見える日」収録)〜「病院童」(AL「問題集」収録)〜ドラマ「Dr.コトー診療所」主題歌「銀の龍の背に乗って」の三連荘。
 「倶に」はスケール大きな曲想の中にグッと迫る歌詞が浮き立ちます。「風前の灯火だとしても 消えるまできっちりと点っていたい」。この言葉どこかで聞いたことがあるな と思ったら秋吉敏子さんでした。「歳をとるのは逆らえない。だから、そのことをどうこう考えても仕方がない。大切なのはその日その日をしっかりと生きること」。私ももうすぐ80代。偉大な二人の女性アーティストの言葉が身に沁みます。「病院童」は座敷わらしの病院版。発想がユニークです。「病院は戦場だ 病院は外国だ 普通の表通りから さほど遠くない」。そんな病院の童(わらし)になりたいとみゆきさんは歌う。座敷わらしが住み着いた家は財を成すといわれている。病院童は出会った患者さんに「きっと治ってね きっと笑って帰ってね」と呼びかける。幸運の妖怪なのです。

 編曲の瀬尾一三氏はこの曲についてこう述べています・・・・・童だからと最初メルヘン・タッチで仕立てましたが、みゆきさんからダメ出しを食らいました。「“戦場”なんだからもっと緊張感を出して」と。そこで、「じゃERにしちゃうぞ」とロックにしたら気に入ってもらえましたね。みゆき&瀬尾コンビは38年。切っても切れないパートナーです。瀬尾さんはまた中島みゆきについてこう語っています。
中島みゆきが作り上げてくるものは、マクロ〜ミクロ、平面的なもの〜俯瞰的なものとオールマイティみたいにとてつもなく幅広い。日常気づかないような心の襞にあるささくれみたいなものを何気なく提示してくる。時には傷に塩もありますが、そういうものを含めた上で大きな愛がある。決して見捨てない包むような愛ですかね。だから最後には癒される。個人、あなたというところの対峙の仕方をしているので、そこが聴く人に一番響くのだと思います。彼女にはまだ僕には見せてない切り口があると思うのでお互い現在進行形というところでしょうか。まだまだいい作品が出てくると思います。
 隣の二人連れ女性の一人が「みゆきさんの歌は全部私に語りかけてくれてるような気がする」と喋っていたのも、こういうことなのでしょう。
 「銀の龍の背に乗って」は、非力を嘆く医師が「明日は龍の背に乗って 命の砂漠へ 雨雲の渦を運んで行こう」と歌う。非力なら龍の力を借りればいい。大切なのは人の命を救うこと。本質を見失わないみゆきさんの視点です。

 「LADY JANE」はとあるJAZZ喫茶の一コマを歌っています。実在するみゆきさんお気に入りの店だそうです。2015年のアルバム「組曲」に収録。ここでピアノを弾いている小林信吾さんはみゆきバンドのバンマスでしたが、2022年、帰らぬ人になってしまいました。62歳の若さでした。この日、「間奏のピアノ・パートは小林さんが遺したソロ・テイクを入れます」とみゆきさん。その部分で、ピアノに寄り添い懐かしみ祈るようなみゆきさんの姿がとても印象的でした。
 いつかの「夜会」で、ファンクラブ「なみふく」会員でもあるN.Y.さんがチケットをゲットできなかった折、当時小林さんのマネージャーをやっていたカオちゃんこと冨原香織さんに獲ってもらったことがありました。小林さん、その節はありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りします。

 前半の最後は恒例の「おたよりコーナー」です。ここで登場したのが寺崎要氏。かの伝説的ラジオ番組「中島みゆきのオールナイトニッポン」のきっかけを作り構成を担当した敏腕放送作家です。リスナーからの便りを選りすぐってみゆきさんに渡すのも彼の役目。そんな中から生まれたのが1983年の名曲「ファイト!」でした。
 2023カタール・ワールドカップ予選リーグ第2戦、対コスタリカ戦。終了間際に吉田麻也がクリア・ミスを犯し痛恨の敗戦を喫してしまいます。次のスペイン戦は勝つしかなくなってしまった。批判集中、キャプテンとしての責任感とも相まって、吉田は極度に落ち込む。そんなとき耳にしたのが中島みゆきの「ファイト!」だった。「冷たい水の中を ふるえながらのぼってゆけ」。このフレーズに「落ち込んでる場合じゃない、やるしかない」と我に返る。日本は強豪スペインを撃破。グループステージを突破することができました。「あの歌のお陰で生き返りました」と吉田。日本中が歓喜したあの戦いの陰には中島みゆきの「ファイト!」があった。

 今回も中島&寺崎コンビは手慣れたやり取りで会場を盛り上げました。一番多かったおたよりは「明日は誕生日。おめでとうございます」というもの。そうです、みゆきさんは次の日、2月23日で満72歳となるのです。しかも干支は辰、年女ですね。そして、休憩に・・・・・。

 その昔、夜会かなんかの休憩時間に、タムジンこと写真家の田村仁氏とバッタリ出会ったことがありました。いつものようにN.Y.さん同伴で。そのときタムジンさん「えっ、そういうこと」と発したのですね。“そういうこと”とはどういうこと? いかにもタムジンさんらしいファジーな表現でした。タムジンさんは、みゆきさんのフォト・ワークをアルバム第2作「みんな去ってしまった」から担当しているので、そろそろ半世紀に達する長い付き合い。みゆきさんにとって一番気の置けないスタッフの一人といわれています。
 第6作「生きていてもいいですか」(1980)は、女の情念を突き詰めて、当時、「中島みゆきは暗い」との定説を決定づけたアルバム。その中に、砂漠にオアシス的な心温まる楽曲が存在します。「蕎麦屋」。私の大好きな曲です。

  世界中がだれもかも偉い奴に思えてきて
  まるで自分ひとりだけがいらないような気がする時
  突然おまえから電話がくる あのう、そばでも食わないかってね
  あいつの失敗話にけらけら笑って丼につかまりながら、おまえ
  あのね、わかんない奴もいるさって あんまり突然云うから 泣きたくなるんだ

 みゆきさん、落ち込んでるな と感じて「そばでも食わないか」と誘い、他愛もない話をしながらふと「わかんない奴もいるさ」と言葉をかける。これ、タムジンさんのことといわれています。「そういうこと」/「わかんない奴もいるさ」。何か同じテイストに聞こえます。

 さあ、休憩のあと、みゆきさんの声はますます力強く我々を圧倒します。スタートは「夜会」楽曲5連荘。1989年から始まった中島みゆきの言葉の実験劇場「夜会」からミラージュ・ホテル〜百九番目の除夜の鐘〜紅い河〜命のリレー〜リトル・トーキョーが間断なく歌われ、しかも早替わり、素早い五変化で我々の目も楽しませてくれました。
 中でも「命のリレー」が圧巻。この歳になると「この一生だけでは辿り着けないとしても 命のバトン掴んで願いを引き継いでゆけ」のフレーズが心に刺さります。自分はいったい何を息子や孫たちに引き継いでやれるのだろうかってね。

「慕情」は倉本聰書き下ろしのTVドラマ「やすらぎの郷」(2017)の主題歌。
愛より急ぐものがどこにあったのだろう 愛を後回しにして何を急いだのだろう
甘えてはいけない 時に情けはない 手離してはならぬ筈の何かを間違えるな
 これまた、心に沁みます。人は誰しも愛を優先したいけど叶わないこともある。手離してはならぬ筈の何かこそが愛なんだろうけれども、しばし後回しにして後悔するものです。このドラマにはBMG時代に作った、CD「きりんのなみだ」で朗読をお願いした八千草薫さんが出演していました。ジャケット写真はタムジンさん。2003年の良き思い出です。

 「体温」は「こんなに危ない世の中で 生きてるだけで奇跡でしょう 体温があるだけで拾いもんでしょう」と歌うアメリカン・ポップス風の軽快なナンバー。AL「世界が違って見える日」(2023)に収録されており、吉田拓郎がサイド・ギターを弾いています。たくろうといえば、2006年、つま恋での「永遠の嘘をついてくれ」のパフォーマンスが忘れられません。たくろうの歌い出しのあと、突然、ジーンズに白いロング・スリーブの中島みゆきがステージに現れましてね。予想外のハプニングに会場は興奮の坩堝と化しました。
 「永遠の嘘をついてくれ」は、1995年、中島みゆきが吉田拓郎に提供した楽曲。夢に向かいながら果たされない男が「まだまだ、これから」と強がっている。そんな男に「いつまでもたねあかしをしないでくれ」と永遠の嘘を聞き続けたい相手。両者の心情の綾が複層的に呼応する。たくろうの歌を本人よりもドンピシャに描いちゃう(?) みゆきさんは凄いなあと思います。
 互いをリスペクトし日本の音楽シーンを颯爽と牽引してきた二人が織りなす感動のステージでした。私はここから音声を取り出して、自作CD「中島みゆきSupremeベスト」に入れております。

 このあと、ウクライナを彷彿とさせる「ひまわりSUNWARD」、初のアニメ主題歌「心音」、アンコールの「野うさぎのように」「地上の星」でステージは終わりました。

 みゆきさん、71歳と364日の記念すべきステージ。女神降臨の宴でした。帰りは恒例の感想会。中島みゆきのステージを40年、150回以上も見続けているN.Y.さんも「今日のは殊の外よかった」との言。このあと「クラ未知」を書くにあたって何度かメールのやり取りをしました。N.Y.さん、ありがとう、またよろしくね。

<参考資料>
NHK-BS「中島みゆきスペシャル」1994 O.A.
BSフジ「輝く続ける中島みゆき」2021.3.7 O.A.
NHK-BS「SONGS 中島みゆき」2022.1.27 O.A.
TBS-BS「心に刺さるグッとフレーズ」2022.12.29 O.A.
 2024.02.15 (木)  「ZENさんのぶらり音楽の旅」という本
 年明け早々、朋友Iceblue功ちゃんから電話が来る。「ZENさんから本人が書いたという本が送られてきました。当然岡村さんにもいってますよね」。「いや、来てないな。どんな本?」と私。「自分の会社時代の体験談といったところですかね。見たところレギュラーの出版本ではなくて、自費出版みたいです」とのことでした。
 ZENさんとは渡部全助氏。私のRCAレコード〜創美企画時代の上司であり、(形の上で)縁浅からざる人物であることは間違いありません。功ちゃんが「当然いってますよね」というのは、「自分に送ってきたのだから、それ以上に深いつながりのある岡村さんには当然送られているはず」という意味合いです。
 まあ、そのうち届くだろうとあまり気にもかけずにいましたが、一か月たっても着荷せず。その間、「送ってきたけど岡村さんには当然いってるよね」とか「来たから読んでみたけど肝腎の曲名が間違っている」とか「なにもしてないのに自分がやったように書いている」とか、「封を開けずにゴミ箱に捨てた」とか、耳に入るはああだこうだのオンパレード。こうなると読んでみたくなるのが人情です。早速功ちゃんに「しばし貸してほしい」と送ってもらいました。タイトルは「ZENさんのぶらり音楽の旅」。早速読んでみましたが、実に面白い。何がといえば、その内容ではなく、失礼を承知で言っちゃいますが、常識&注意力を疑わざるを得ない作文力のことです。これは、今回のテーマとしてきっちりと書かせていただきますが、その前に一言。

 ZENさんは榎本襄(JOE)さんとの共同経営会社SVACの破産画策中なのです。この会社、創美企画の出版会社なのですが、本体がソフト制作から撤退した後、ZENさんが社長で映像担当、JOEさんが取締役でCD担当として、ここSVACでソフト制作販売事業を続行してきました。
 ところが、数年前から業績が徐々に悪化、事務所の維持も困難となり、遂にはJOEさんの自宅マンションに事務所を移して細々と業務を継続。JOEさんに継続の意思はあるものの、ZENさんにその気はなくなり、昨年から、会社破産に向けて動き出したわけです。続けたい者とやめたい者。二人の溝が埋まらないまま、ZENさんは会社破産に突き進みます。JOEさんは「破産させるのは仕方ないとして、ならばせめてこちらの権利分は残してほしい。例えばレコード会社に個人で支払った保証金や、事務所代わりに使ったマンションの家賃の一部等を」とZENさんに請願するも「弁護士の下、破産手続きは進んでいる。申し立てがあるなら弁護士に言ってくれ」との返答だったとか。これが、これまで数十年もコンビでやってきたパートナーへの言い様でしょうか。この確執・いざこざがたたり、昨年秋、JOEさんは脳梗塞を発症してしまいました。
 そんなわけで、藤圭子を世に出した敏腕ディレクターとして、業界にその名を轟かせてきたJOEさんですが、現状、体調はすぐれず、生活も決して楽ではないようです。パートナーが困っている時に、ZENさん、自費で本を出してあちこちに配りまくるとは、一体どういう神経をしているのですか。そんな金があるのなら、せめてJOEさんに払うべきものを払ってからやるのが筋というものじゃないですか。個人的恨みつらみはないものの、仁義を重んじる私としては、「ZENさんのぶらり音楽の旅」なる本を徹底的に叩いてやろうと思うわけであります。

 まず指摘したいのは、間違いだらけの記述です(P数字はミスのページ)。
     誤                正
フォーク・クルセーダス P5     ザ・フォーク・クルセダーズ
夫婦船 P22            夫婦舟
エルビス P29           エルヴィス
アメリカン・ポップ        アメリカン・ポップス
長田貴子 P30           永田貴子
ブレンチ P52           ブランチ
依存 P58             異存
時の過ぎゆくままに P109      時の過ぎゆくまま
浸出 P113             侵攻
ジョン・バエズ P117        ジョーン・バエズ
邦画販売課 P120          邦楽販売課
積み込む P128           包み込む
多いに P132            大いに
男優主演賞 P138          主演男優賞
クールファイブ P144        クール・ファイブ
総立 P152             創立
 ZENさんは会社時代、常々こう言っていました。「なあお前、文章を書く時一番気をつけなくてはいけないこと知っとるか。それはな、固有名詞は絶対に間違えたらいかんちゅーことや。言い訳が利かんからな。よく覚えとき」。そんなZENさんが固有名詞をこれだけ間違っています。昔から言行不一致の人でした(笑)。では個別にツッコミを入れておきましょう。

●「ザ・フォーク・クルセダーズ」が「フォーク・クルセーダス」はイカンですな。「ザ」抜けはまあいいとして、音引きと濁音がマチマチなのはいただけません。阪神「タイガース」を、「タイーガズ」と書くようなもの。阪神ファンにドヤされまっせ!

●ZENさんは三笠優子さんを評してこう言っていました。「三笠優子というのは凄い歌手だ。歌に物語がある。やはり浪曲をやっていた人は違うな」。それほど敬愛する三笠優子さん最大のヒット曲「夫婦舟」を「夫婦船」と書いちゃまずいでしょう。客船じゃないんだから。

●「エルビス」ではなく「エルヴィス」と書きましょう。RCAレコードの屋台骨を担った偉大なアーティストの表記違いは罪です。これはまた「クールファイブ」ではなく「クール・ファイブ」も同じこと。“ナカグロ”なんかいいじゃないかと言うなかれ。こちらもRCA邦楽の礎を築いた偉大なアーティストなのですから。

●内山田洋とクール・ファイブの「長崎は今日も雨だった」の作詞者は「長田貴子」ではなく「永田貴子」です。ZENさん本文で、女性のような名前ですがこの方は男で長崎「銀馬車」の支配人・・・・などと延々と説明しているのですから名前を間違えちゃいけませんね。

●「アメリカン・ポップ」、「ブレンチ」、「依存」、「積み込む」、「多いに」、「総立」あたりは、ケアレス・ミスか常識欠如のなせる業。ZENさんは酔っぱらうとよく、「お前、俺を超えられるか」と仰っていましたが、よくよく自分を知らない人のようです(笑)。大言壮語は気を付けましょう。

●映画「カサブランカ」の挿入歌は「時の過ぎゆくまま」ですね。「時の過ぎゆくままに」は沢田研二だよ。

●ナチス・ドイツ「浸出」ってなに?確かに「浸出」という言葉はありますが、コレ、物が溶け出すという意味。これは私の想像ですが、ZENさん、ナチス・ドイツの「シンシュツ」でP/Cを引いたのでしょう。そこに「浸出」という文言が出てきたので採用した。ここは「侵攻」でしょうね。ニュースを見てればよく出てくる文言です。

●「ジョン・バエズ」じゃなく「ジョーン・バエズ」です。桜田大臣の「レンポウさん」に「レンホウです」ときつく言い放った蓮舫議員でしたが、ZENさん、ここはフォークの女神に怒られまっせ。「ジョーンです。ジョンは男の名前よ」って。

●「邦楽販売課」を「邦画販売課」はないでしょう。RCAは画廊経営の会社じゃないんですから。

●アカデミー賞においては、昔から「主演男優賞」が通り相場で「男優主演賞」とは言いません。「ひっくり返っているだけじゃないか、目くじら立てるなよ」なんて言わないでくださいな。文中にもあるような、例えば、「アーネスト・ボーグナインは映画『マーティ』に出演した」の「出演」をひっくり返せば「演出」したになっちゃいます。男優ボーグナインが監督になっちゃうのだから大違いでしょう。コレ、屁理屈!?

 以上、今回は一目瞭然、解りやすいミステークを指摘させていただきました。次回は文章力構成力等内容について言及してみたいと思います。まあ、指摘疲れしていなければの話ですが。
 2024.01.17 (水)  新年所感〜メサイア出現を待望する
 年明け早々、1日には能登半島地震が、2日には海上保安庁機と日航機の衝突事故が、立て続けに起きるという最悪のスタートを切った日本でした。被災された皆様には一日も早く日常が訪れますようお祈りいたします。
 そんな状況下、「火の球となって」は掛け声ばかり、本気度ゼロの我が国総理大臣の言葉は全く心に響きません。半世紀前に吉田拓郎が「この国ときたら賭けるものなどないさ」と叫んだ♪落陽(詞:岡本おさみ)の世界から無進化状態むしろ退化甚だしい日本です。世界を見れば、ウクライナVSロシア、パレスチナVSイスラエルの戦争が継続中。地球沸騰。世界銀行からは世界経済3年連続減速の見通しが発出。まさに混沌暗黒お先真っ暗の世の中です。

 これらのあおりを受けて新年恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートは1月6日に延期。やはり気分が出ません。指揮のクリスティアン・ティーレマン(1959-)は5年ぶり2度目の登場。初登場の2019年は、珍しやスタンディング・オベーションの喝采でしたが、自分にとっては、前年に母を亡くしたためでしょう、淋しい気持ちで観たのを想い出します。あれから早5年。今年は母の七回忌の法要です。
 番組ゲストは作曲家・指揮者の久石譲氏。生で聴くのは初めてだとか。その感想はといえば「思った以上に楽しかった」でした。「思った以上に」ってどう思っていたんかい。さらには「ティーレマンさんは頭のいい組み方をしていますね」と来た。「頭のいい」は音楽家に対する誉め言葉たり得ない。またウィーンフィルに対しては「バランスがいい」の一言。音色的特質や演奏そのものに対する言及はほとんどなし。まあ、これがこの音楽家氏の感性なのでしょう。そのくせこの方、音楽の本場ウィーンで行われる伝統あるイヴェントに対し、どこか上から目線の云い様なんですね。肩書が作曲家・ピアニスト・指揮者なんか付いていますがすべてが三流!? 超一流のイヴェントに対して三流音楽家が何ほざく、もっと謙虚に喋れんのかい!と言いたくなります。
 第2部ではブルックナー(1824-96)の「カドリール」が演奏されました。これは2024年がブルックナー生誕200年のメモリアル・イヤーだから。これを目指して、ティーレマン&ウィーンフィルはブルックナーの交響曲全集を完成させています。これを買おうか買うまいか、現在大いに迷っているところ。どれもみな同じように聞こえるブルックナーの交響曲は最後の3曲があればいいような。7番はハイティンク、8番はクナッパーツブッシュ、9番はクレンペラーで十分かと思っております。失敬!
 ツィーラーの「ウィーンの市民」はヨハン・シュトラウスUの「ウィーン気質」と並ぶウィーン人を描いた名品。ウィーンの音楽家、例えばシューベルトや不死身のアウグスティンなどから、ウィーン人の気質はロマンティスト&楽天家と感じていました。「ウィーン気質」はロマンティスト、「ウィーンの市民」は楽天家的側面を各々象徴しているように思います。この日の「ウィーンの市民」におけるティーレマンのダイナミックな表現は、我がお気に入りのアルバム「ウィーンの休日/クナッパーツブッシュ」の巨人ファフナーの歩みのような凄演をちょっと思い出させてくれました。

 一方NHKニューイヤー・オペラコンサートは例年通り1月3日にO.A.されました。毎年、最後を締めくくるのは歌劇「椿姫」の「乾杯の歌」や喜歌劇「こうもり」の「ぶどう酒の燃える流れに」など底抜けに明るい曲と相場が決まっていたのですが、今年はヘンデル(1685-1759)のオラトリオ「メサイア」から「ハレルヤ・コーラス」でした。これもこのところの世相を反映しているのでしょうか。

 オラトリオ「メサイア」は、イエス・キリストの降誕〜苦悩〜受難〜贖罪〜復活という流れの中に、人類の救い主としてのキリストの存在を賛美と尊崇の念を以って描き出します。スタンダードなテキストが宗教曲としては珍しい英語なのはヘンデルがイギリスに帰化したからでしょう。彼はウェストミンスター寺院に眠っているのです。全曲の中から印象的な歌詞を抽出すると
主は天と地そして海と陸 すべての国を揺り動かす
そしてすべての民が望むところをもたらす
人々が暗い闇に覆われている今
主こそすべての民に平和をもたらす正しき救い主
すべての民の心に安らぎをもたらす救い主
 「メサイア」とは「油を注がれたる者」即ち「神から選ばれし支配者」の意味。まさに「救世主」のこと。「ハレルヤ・コーラス」の”ハレルヤ“とは神を称える賛美の言葉。三位一体説から神=主イエス・キリストであるからしてキリスト賛美の言葉でもあるわけです。

 アメリカの調査会社ユーラシアグループが「今年の世界リスク」を発表しました。そのベスト5を挙げてみましょう。

1 トランプの大統領復帰
2 瀬戸際に立つ中東
3 ウクライナの分割
4 AIのガバナンス欠如
5 ならず者国家の枢軸

 6番目に我が日本のリスクを付け加えるとすれば、民意からかけ離れた優柔不断なリーダーの下、大志無き政治屋が保身に走るだけのお寒い政治状況 といったところでしょうか。
 上記“6大リスク”を総括すれば、身勝手な理屈で不正を正当化しAIを悪用し嘘で固めた正義を振りかざす権力者ばかりが横行する「真のリーダー不在の分断と格差の世界」ということになるでしょう。彼らはまた温暖化がもたらす異常気象にも無関心。だからこそ、世に平和をもたらし人に安らぎをもたらすメサイア=救世主の出現を待つしかない。出でよメサイア!と祈りつつオラトリオ「メサイア」に耳を傾ける今日このごろなのであります。

 昨年は、老化防止のために理屈抜き丸暗記をいくつか敢行してきました。ダービー馬90頭、有馬記念馬68頭を皮切りに、戦後日本の総理大臣37人、アメリカ大統領14人、イギリス首相19人、中国の国家首席6人、ソ連〜ロシアの首長・大統領11人、横綱35人、「冬の旅」24曲、「我が祖国」6曲、「展覧会の絵」10曲、「ローマ三部作」12曲、鎌倉五山、京都五山 etc。
 今反芻すると1〜2割は忘れていますね。面目なし(笑)。でも忘れたら反復する。この繰り返しでなんとか頭に刷り込まれるものなんです。 で、今年は手始めに命数法、即ち、万・億・兆・京・・・・・などの超特大数字の表示名を全部覚えようかと思い立ちました。では京の次から下記、( )内は0の数。
垓(20)𥝱(24)穣(28)溝(32)澗(36)正(40)載(44)極(48)
恒河沙(53)阿僧祇(56)那由多(60)不可思議(64)無量大数(68)
 こんな数、どこで使うんじゃい! では、今回はこれでお開きといたしましょう。
 2024年が良き年でありますように!

<参考資料>
最新名曲解説全集21声楽曲1(音楽之友社)
ヘンデル作曲:オラトリオ「メサイア」 DVD (ワーナー・ミュージック・ジャパン)
   ホグウッド指揮:アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
   ウェストミンスター大聖堂1982年収録
<CD>
ウィーンの休日/クナッパーツブッシュ指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団1957
ブルックナー作曲:交響曲第7番
   ハイティンク指揮:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団1978
ブルックナー作曲:交響曲第8番
   クナッパーツブッシュ指揮:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団1963
ブルックナー作曲:交響曲第9番
   クレンペラー指揮:フィルハーモニア管弦楽団1970
 2023.12.10 (日)  12月 雑感〜吾が今年の漢字は「失」
 ♪ゆっくりと12月のあかりが灯りはじめ 慌ただしく踊る街を誰もが好きになる〜B'z「いつかのメリークリスマス」の一節が心に響く季節になりました。

 そんな折、本年の流行語大賞が発表されました〜「アレ」。阪神タイガース岡田彰布新監督が、「優勝」をこの言葉に置き換えてシーズンを突っ走り、オリックスとの頂上決戦にも勝利して日本一を勝ち取りました。ずっと「アレ」「アレ」と聞かされてなんじゃコリャ と思っていましたが、結果よければすべてよし。しかも私は仲間と恒例の日本シリーズ・トトカルチョに「阪神の4勝3敗」と入れて見事的中。これはもう文句のつけようがありません。岡田監督にThank you very much !!です。
 阪神の日本一は1985年以来38年ぶり。ずいぶん昔の話です。この年に流行った歌に天童よしみの「道頓堀人情」がありまして、これがそれまで鳴かず飛ばずだった天童、起死回生のヒット曲になったんですね。これぞ浪花のド根性と評判になりましたが、私はこの歌を聞いてそうは感じませんでした。では1番の歌詞を下記。
ふられたぐらいで泣くのはあほや
呑んで忘れろ 雨の夜は
負けたらあかん 負けたらあかんで東京に
冷とない やさしい街や道頓堀は
未練捨てたら けじめをつけて
きっぱりきょうから 浪花に生きるのさ
 この歌「厳しい東京でなんとか頑張ったけど負けてしまって、ならばあったかい浪花で生きてゆこう」という、言ってみれば負け犬の歌なんですね。だからなんでこの歌が浪花人の応援歌になるのかわからない。でもまあ理屈はよしましょう。これで天童よしみの出世のきっかけになり、その年阪神タイガースが初の日本一になったのですから。

 海の向こうでは大谷翔平選手が日本人初のMLBホームラン王を獲り、2度目の満票MVPに輝きました。満票MVP2回はMLB史上初の快挙だそうですが、これはまあオマケ。なんといってもホームラン王は凄い!あの松井秀喜もなし得なかったことを、しかも投げては10勝と二刀流で成し遂げちゃう。これはもう快挙中の快挙です。
 さて、FAの大谷選手はどこへゆく。彼の望みはポストシーズンを戦ってワールドシリーズを制すること。ならば、ドジャースだ、ジャイアンツだ、ブルージェイズだ、カブスだ、世間は実に喧しい。私の予想はエンゼルス残留です。理由は今年のポストシーズンの顛末です。ポストシーズン常連の強豪ブレーブスもドジャースも早期に敗退、ワールドシリーズを争ったのは、昨シーズン エンゼルスより下位、地区4位だったレンジャーズと同じく昨シーズン地区4位だったダイヤモンドバックスでした。その他、例えばアリーグ東地区を見ても、ヤンキースやレッドソックスといった老舗強豪チームに代わってオリオールズ、レイズ、ブルージェイズなど新興勢力が台頭した。これらのことから大谷さん、今強いチーム必ずしもワールド・チャンピオンたらず、チーム作りこそが強いチームを作る と身をもって感じたはず。球団もやっと本腰を入れて実績あるロン・ワシントン監督と2年契約を交わした。ならば球団のやる気に賭けて当面ここで頑張ろう。契約にはオプトアウト(契約期間中での解除)を付ければいい。「強いチームに行く」よりも 恩と愛着あるエンゼルスを「強いチームにする」。これが大谷翔平の選択ではないか。彼の性格を考えるとこう確信せざるを得ません・・・・・とここまで書いたところで「大谷、ドジャースと10年7億ドル(1,015億円)で合意」のニュースが飛び込んできました。私の予想は見事に外れ!やはり彼ほどの選手になると自他様々な思惑が絡むのでしょう。彼の本意を知りたいものです。

 私がスポーツ界において日本人達成を夢見ていたことが3つありました。一つはゴルフのマスターズ優勝。もう一つはMLBのホームラン王。そしてサッカー ワールドカップの優勝です。これまでに前二者は成就。あとはワールドカップの優勝です。なんとか死ぬまでに見たいもの。ガンバレ森保ジャパン!!

 サッカーJリーグでは東京ヴェルディ16年ぶりのJ1復帰が決まりました。ヴェルディといえばキング・カズやラモス瑠偉らを擁してJリーグ発足当時、常勝の名門チーム。それが2008年J2に降格したままその地位に甘んじていた。関係者の喜びはいかばかりかと想像します。
 ところで、この劇的出来事が起きたのは、Jリーグが来季からJ1を2チーム増やすことにしたからです。Jリーグは現在3リーグ制。これを毎年入れ替えながら活性化を図っている。1993年の発足以来弛まぬ改革によって形成してきた成熟の機構なのです。それに引き換え1936年に誕生した老舗的存在の日本プロ野球機構NPBのなんたる保守体質。一番の問題はポストシーズンのシステムです。6チームがレギュラーシーズンを戦ってリーグチャンピオンが決まる。そのあと、決着がついているはずの上位3チームが同じ顔触れで再度日本シリーズの出場権を争うというもの。だからリーグチャンピオンじゃないチームが日本一になるなんてことが起こる。“クライマックス・シリーズ”なんて大仰な名前を冠していますが、実にヘンテコなシステムなんですね。
 そこで提案です。セパ両リーグに各2チームずつを加えて、1リーグ8チーム制とする。8チームを東西4チームずつに分け、東西地区優勝チーム同士でリーグ優勝を決める。そしてリーグチャンピオン・チーム同士が日本一を争う。これで理に適ったまともなシステムができる。新たに4チームを増やすのは大変だって? そんなもん、やる気になればすぐにもできますよ。現在日本には独立リーグってのがあって約20チームが存在している。ここから選抜して4チームを作る。又は統合して入れ替え制にする。モデルはアメリカ、決断はJリーグ。これを見習うべしです。でも古い体質のNPBじゃ無理でしょうね。早くナベツネさんの呪縛から解き放たれてほしいものです。

 先日、NHK-BSを見ていたら懐かしい人物が登場しました。与田春生くん。BMG JAPANで一緒に仕事をしたことがあります。実は彼、歌謡曲〜J-POPの売れっ子作詞家橋本淳(1939-)さんの御子息。番組は、橋本さんが盟友筒美京平(1940-2020)さんの遺作を自らが詩を書いて蘇らせようとする企画。歌い手は平山みき。題して「ザ・ヒューマン さらば友よ」。与田くんはこのプロジェクトのディレクターとして登場しました。親父さんのご指名だったのでしょうね。

 ところがこの親子、ハナっからまったく噛み合いません。息子はこう言います。
歌い手が平山みきさんという時点で購買層はかなり狭くなる。そこをしっかり取れる曲をつくらないとダメだと思う。
 これに対して父親は
どの世代に合わせるかなんかはどうでもいい。お前さんの話を聞いているとリアルな現実論ばかり。それって面白くないんだよ。君は社会に合わせている。俺は合わせたことなんかない。ヒット曲は算術を超えたところから出てくるんだ。
 さすが、稀代のヒットメーカー橋本淳。発言に重みがあります。そして橋本氏、息子をクビにして新たなディレクターを立ててしまいました。確かに与田くんは会社時代も「コンセプト」だ「切り口」だ「ターゲットだ」と戦略的理屈が多かった。でも、レコード会社のディレクターはまあそんなものなんです。これでMISIAを見つけてきて売ったのだから、彼は優秀な仕事人だったということです。そこで私は考えました。上記の発言はどうなのか。このプロジェクトでそんな発言をするかなあと。もしやこれ、出来レース=やらせ では? NHKでは最近、出家詐欺を扱った「クローズアップ現代」でやらせ疑惑が報じられているし。与田くんを知るものとしてなんかそんな気がするのであります。そういえば与田くん、昔君に進呈した英国製スピーカーRogers PM410は健在かな。

 12月6日、サントリーホール、N響第1999回定期公演に家内同伴で行ってきました。ハイライトはアリス・紗良・オットのピアノによるリスト:ピアノ協奏曲第1番、指揮はファビオ・ルイージ。
 真っ赤なドレスで颯爽と登場したアリス。歩様はまるで妖精の舞。それだけでもう一幅の絵画の趣き。演奏が始まる。粒立ち良い響き、瑞々しい感性、強音と弱音の対比の綾、躍動感あふれる動作、強打で乱れる髪、フレーズ終わりの手の動き、顔の表情。まさに全身これ音楽。豪華さと繊細さを併せ持つリストの傑作協奏曲の魅力を余すところなく引き出す見事なパフォーマンスでした。弾き終わって、「激しい曲のあとはソフトな曲をお届けします」とサティのグノシェンヌを演奏。ゴージャスなメインディッシュをそっと包み込むような爽やかな甘さのデザート。そんなアンコールでした。
 彼女、実は多発性硬化症を患っています。この病、あの天才チェリスト ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-1987)の演奏家生命を奪った難病です。いつ襲ってくるかわからない発作を危ぶみつつアリスはパフォーマンスの一瞬一瞬に命を懸けている。どうか末永くできる限り長く活動してほしい。神に祈るばかりです。
 実はこのコンサート、幼馴染の友人M.F.氏からのプレゼントでした。クラシック好きで富裕層の彼はN響と新国立劇場オペラ公演を年間で抑えており、今回これらがバッティング、奥様に「年末なので喜歌劇『こうもり』にしましょう」と言われ、私にN響が回ってきたという次第。神の配剤に感謝です。アリス感動のステージにお礼のメールを打ったところ (>_<)マークが返ってきました。そこで私は(^_^)マークを返信しました。M.F.さん、本音はN響に行きたかったのかな?

 では、吾が今年の漢字一文字を。それは「失」。その心は、近しい方4人を失ってしまったこと。2月3日にT.M.さん、8月21日にK.T.さん、9月26日はJ.S.さん、そして11月14日にはT.F.さんが旅立って行ってしまいました。それぞれが親しく大切な方々でした。淋しくも残念な思いでいっぱいです。謹んでご冥福をお祈りします。また逢う日まで 安らかに!
 2023.11.15 (水)  松岡三恵CD復刻の顛末
 秋といってもちらほら夏日が現れる異常気象の11月、「16日、ホテルニューオータニのトゥール・ダルジャンに来てください。ディナーをご一緒しましょう」とのお誘いがありました。連絡の主は石井宏先生。私がこの春からお手伝いしてきた「松岡三恵リサイタル」のCD復刻が完成したお祝いに とのことです。松岡三恵さんは石井先生の奥様にして優秀なピアニスト&教師の方。このCDは三恵さんが遺された唯一無二の録音です。
 私、石井先生とお付き合いさせていただいて十数年、飲み会/食事会は数知れず なのですが、創業1582年、世界の王侯貴族が集うセーヌ河畔の老舗レストランの世界唯一の支店なんぞは無論初、望外の出来事です。ご一緒するのは当CDの復刻に直接携わってくださった東洋化成の営業本部長田中知樹氏。先生から「完成の暁には3人でお祝い会をやりましょう」と聞いてはいたものの、まさかそのような超ド級のレストランで とは思ってもみませんでした。先生、その完成がよほどうれしかったのでしょうね。今回はその顛末を記させていただきます。

4月15日(土) 石井先生からの手紙
三恵が亡くなった翌年2016年7月20日に発売された「松岡三恵リサイタル」のCDが、絶番貴重品として高値で取引されているそうです。定価3000円のCDがなんと10,000円もの値段がついているとのこと。ネット上では再発売の要望も高まっているとか。このCDは初版500枚、再版250枚。その製造販売を一手にやっていただいたゼール音楽出版の寺元宏氏は昨年亡くなってしまい、再プレスの手立てがなくなってしまいました。そこで、レコード会社出身の貴兄にこのCDの「復刻販売」にトライしていただきたく、お願いする次第です。ただしマスターテープも付属品の刷版も行方知れずにつき、素材は既成CDとなります。
 CD「松岡三恵リサイタル」は発売後すぐに石井先生から聴かせていただきました。1986年12月5日の録音で、収録曲は、シューマン「クライスレリアーナ」作品16、ショパン「幻想曲」作品49、「バラード 第3番」作品47、リスト「ハンガリア狂詩曲第12番」の4曲です。1曲目の「クライスレリアーナ」から音が流れ出した瞬間、そのピアニズムに息を呑みました。力強く輝かしいタッチ、熱気溢れるロマンの香り。ホロヴィッツやアルゲリッチにも匹敵する第一級のピアノ演奏です。あの優しい笑顔の奥様がこんな凄まじい演奏をするなんて! 生前の姿を知る者にとって、これは驚嘆の一撃でした。
 寺元氏の働きかけで、レコード芸術の特選盤に輝き、産経新聞、読売新聞では、松岡三恵「魂揺さぶるピアニスト」「気骨の人 魂のピアニスト」希少音源 夫の石井宏さんCD化 などと絶賛の記事が掲載されました。
 付属の石井先生書き下ろしによるブックレットは数十頁に及ぶ大作。三恵さんとの出会いからヤマハのピアノの貸与、日本音楽コンクール1位獲得(2位はフジコ・ヘミング)、パリ留学、そして結婚に至るまでの道のりが克明に描かれた渾身のライナーノーツです。このような作品を世の中に遺すことは大いに意義あること。なんとしても実現に漕ぎつけようと決意も新たに名盤CD復刻のスタートを切りました。

5月12日(金) K社と会合

 復刻のみならず販売もということなので、やはり既存のレコード会社に依頼するしかありません。業界を去って十余年、現役時代の知り合いはほとんどがリタイア。どうしたものかと思案していたら、当サイトの主宰者川嶋氏がK社との委託業務を継続中ということに気づきました。まさに灯台下暗し。
 レコード業界、CDの売り上げは急降下。特にクラシックは、かの指針的スタンダード月刊誌「レコード芸術」が廃刊になるなど、衰退の一途をたどっています。がその中で、クラシック愛好者の趣向に合致して適正なリリースを続けているK社が昨今最も信頼できる会社である と考えていました。川嶋氏に取次ぎを依頼すると、すぐに返事がきました。GW後、東日本橋で飲みながら話を ということに。

 先方は部門を統括するO氏、クラシック制作担当のM氏、ジャズ担当のH氏の3名。即、持参した資料を渡して説明すると、M氏が「石井先生とは昔懇意にお付き合いさせていただきました。無論このCDは存じ上げており、大変貴重な音源であることも承知しています。是非前向きに取り組ませていただきたい」との言。このCDの価値を理解してもらっているし、先生とも旧知、これはうまくいくこと間違いなし の感触でした。
 余談ですがH氏は故田畑くんと知り合いで、トム・ハンクスのツイッターも見ており、四方山話に花が咲きました。
 翌日、先生には「K社さんはとても好意的で首尾よく運ぶと思われます」との葉書を送りました。石井先生は御年92歳。昨今、耳の具合の関係で、電話は使われておらず、専らFAXなのですが、これは私が不所持。なので、通信手段は郵便のみ、やりとりに一週間はかかります。ITの時代にこれまた悠長な話なのです。

 5月16日(火)、M氏から、「現在の市場の状況から、かのCDは旧譜であるため、ショップからのオーダーは二桁程度(100枚以下)と思われます。したがって、リリースを実現するには買取りが必要となります」とのメール。早く言ってよ〜!です。「具体的にどのくらいでしょうか」と質問。「単価1500円として200枚」との返事。青信号から黄色が点滅。でも昨今の状況からそんなもんだろうと理解し、先生にはその旨訂正を入れました。これに対して先生から「買取りはやぶさかではないが、要求するなら数字的根拠を示してしかるべき」と返答あり。これも当然のことです。互いの思惑を、私を間に、郵送を含んでやり取りするのも大変な労力、時間の浪費、ストレス甚大。なので、石井先生とK社の顔合わせを早急にやりましょう ということになりました。“早急”といっても1か月余後となったのは、郵送介在コミュニケーション形態によるものです(笑)。

6月30日(金) 石井先生宅で打ち合わせ

 一堂に会したのは、K社M氏、東洋化成株式会社営業本部長田中知樹氏、石井先生、そして私の4名。
 まず田中氏から製造費の説明が。製造素材は既存CDのみ、しかもブックレットが数十頁に及ぶ大物なので、見積もりは1,040,564円(300枚)になる というもの。これに対し先生は、「わかりました。お支払いの条件は?」。「前金となります」と田中氏。「承知しました」と先生。これには私もびっくりしました。石井先生は100万円なら出す気でいる。復刻の完成が最優先で市販ルート構築は二の次。このあたりに、先生のこのCDに対する思い込みの深さを改めて感じました。

 先生はM氏に「販売はどのようになりますか」と尋ねます。M氏「弊社が製作販売を請け負うにはこの製造費では難しい。委託販売も別途稟議を通さねばならず、即答は致しかねます」と返答。いやはや、当初の勢いが嘘のような消極さ。石井先生、拍子抜けの体。ただ、これ以上は突っ込まず、話は製造費の軽減に移ります。
 製造費の8割はブックレットが占めています。刷版がないことが原価を圧迫しているわけで、印刷用のデータがあれば費用は大幅に削減できるはず。ならば、印刷をした野毛印刷社に問い合わせよう ということで散会しました。

7月24日(月) 東洋化成から新たな見積もりが

 しばらくして田中氏から朗報が飛び込んできました。「野毛印刷社に問い合わせたらデータが保存されており使用が可能とのことです」。本来やるべきK社に代わって打診交渉した結果でした。新たに出てきた見積もりは67万円。なんと37万円の軽減です。一気に事態好転。田中氏のご尽力には感謝あるのみ。ここまで落ちればK社の製造販売が可能になるのでは? K社への製造費計上、買取り条件をどう整えれば稟議が通るかを考えました。
 買取り金額は、5月16日のやり取りから、1500円×200枚=30万円。製作製造費は定価の30%が目安なので、単価900円×300枚=27万円を計上。これならばK社の稟議は通るはずです。
 一方、石井先生の負担金額は、買取り30万円。製造費補填67万円-27万円=40万円。合計70万円。これは用意いただいている100万円をはるかに下回ります。これで双方丸く収まるのではないか。この案をもってK社に出向くことにしました。

8月10日(木) K社と会合

 先方はO氏とM氏。挨拶もそこそこにO氏が切り出しました。「前提として製造は石井氏にお願いしたい。そのCDを弊社が単価1000円で50枚買い取ってスタートし、追加オーダーは順次行うことでいかがでしょうか」
・・・・・唖然!!定価3000円の商品を1000円とはなんたる安値見積もり。交渉の余地なし。当方の提案を出すまでもありません。あの最初の熱気はいったい何だったのか!でもこれはK社云々というよりも、クラシック業界の急激な地盤沈下のせいなのだろうと認知せざるを得ませんでした。「おそらくこれを石井先生が呑むことはないでしょう。販売については別途考えることにいたします。諸々お世話になりました」とK社を後にしました。
 石井先生には即手紙で報告。「K社はそんなものでしょう。ともあれ作ることは進めましょう。田中氏と最終打ち合わせをしたいので、日程を決めてください」とのお返事がきました。

9月12日(火)石井先生宅で打ち合わせ

 東洋化成田中氏から300枚製造の最終費用、納品日、クレジットやⓅ表示、支払い条件等の提示説明があり、石井先生はこれを了承。製造に関する打ち合わせは短時間で終了しました。
 そのあと、田中氏から販売ツールの提案がありました。東洋化成はアナログ盤の販売ルートを独自で有しており、タワーレコードでの販売は可能ということです。これは昨今のアナログLPの好調さのなせる業でしょうか。さらに、インターネット通販に乗せることも可能 ということでした。石井先生も「是非よろしく」ということに。松岡さんのお弟子さん関連ではすでに多くの購入希望が来ており、この流れならば、300枚の復刻は適正だったということになりそうです。

10月4日(水) 石井先生から葉書が
お元気ですか 東洋化成田中氏より10月27日(金)に完納小生宅に届くそうです。一般市販ルートはタワーレコードが引き受けてくれるそうです。いろいろごたごたありましたが、これで一巻の終わり、ありがとうございました。ご尽力に感謝します。
 依頼人からの「一巻の終わり」宣言にほっと安堵の胸をなでおろしました。当初の楽観が落胆に変わったあと、とにもかくにも製造の目途が立って、最後は販売ルートも構築。地球沸騰の猛暑を挟んだ悲喜こもごもの半年間が終わりました。結局K社とは縁がなかったことになりますが、これは、前にも述べましたが、担当者のせいではなく、CD市場が想像以上に落ち込んでいることが原因でしょう。そんな中で、K社が東洋化成の田中氏と引き合わせてくれたことが成功の最大因となりました。その意味ではK社M氏の功績は大というべきです。そして、田中氏の真摯にして誠意ある対応には感謝あるのみです。
 石井先生は、奥様の名演奏と自身の手になる渾身のブックレットが合体したCDの完全復刻が実現して、大いに満足されていると思います。

 今回のプロジェクトにおいては、石井先生→岡村→川嶋氏→K社→東洋化成田中氏のリレーが成功に導いたことになります。関係の皆様に大いに感謝申し上げます。

 では明日、ネクタイ着用、緊張しまくりながら、世界有数のレストランに行ってまいります。
 2023.10.12 (木)  田畑圭一郎くん、安らかに
 8月21日、うだるような暑さの中、田畑圭一郎くんが一人で旅立っていってしまいました。日本ビクターの2年後輩の彼とは、出会ってから53年間、とてもとても親しく付き合ってきました。死の報を聞き、それが安穏たる様相ではなかったため、まずは驚き、次には、なぜという疑問が沸々と湧くばかり。でも事実は事実。疑問を解明したところで彼は還ってこないのだから、ここはもう安らかな成仏を祈るしかないのでしょう。
 誰に看取られることなく、一人淋しく逝った田畑くん(以下K.T.くん)には音楽で送ってやるのが相応しいと思い、喪主である彼のお兄さんにCDを作ってお届けしました。タイトルを「エリー・アメリンク+ For K.T.」としました。アメリンク(1933-)は彼が大好きだったオランダ人ソプラノ歌手。その澄み切った美声は彼の趣味の良さが覗えます。彼女の歌を15曲。+は、お気に入りのインスト曲2曲をプラスしたこと。彼の気持ちになって選曲しました。その曲目を下記。

              エリー・アメリンク+ For K.T.
  モーツァルト
    1 すみれ 2 夕べの想い 3 クローエに 4 春へのあこがれ 5 (パリの空の下)
  J.S.バッハ
    6「コーヒー・カンタータ」よりアリア
  シューベルト
    7 野ばら 8 水の上で歌う 9 幸福 10 (イパネマの娘) 11 音楽に寄せて
    12 アヴェ・マリア 13 子守歌 14 (ソフィスティケイテッド・レディ)
  フォーレ
    15「レクイエム」より「ああ、イエズスよ」
  ドヴォルザーク
    16 ユモレスク
  パッヘルベル
    17 カノン

    エリー・アメリンク(ソプラノ)1-15
      イエルク・デムス(P) 1-4 ルイス・ヴァン・ディジック(P) 5,10,14
      コレギウム・アウレウム合奏団 6 ルドルフ・ヤンセン(P) 7-9,11-13
      ジャン・フルネ:ロッテルダム・フィルハーモニー 15
      ヨゼフ・スーク(Vn) 16 パイヤール室内管弦楽団17

 ♪すみれK476 はモーツァルトの歌曲の中でもっともポピュラーな楽曲でしょうか。少女に摘み取られることを願いながら、踏みつけられてしまうすみれのはかなさ無念さが歌われます。「かわいそうなすみれ それは本当にかわいいすみれだった」。モーツァルトが書いた唯一のゲーテ歌曲。
 T.K.くんに桑島雅直くんという親友がいて、田園調布のお坊ちゃん。父はかの下山事件で司法解剖を執刀した法医学の権威桑島直樹博士。姉のすみれさんは美智子上皇妃殿下とも交友のあるハーピスト。美智子妃ご臨席の演奏会にT.K.くんと一緒に行ったことを思い出します。お姉さんの名前はもちろんこのモーツァルトの歌曲に由来しています。

 ♪夕べの想いは 清らかで敬虔な歌曲。昨年3月、T.K.くんとも知り合いの岩崎由紀さんが亡くなったとき、この曲ばかりのCDを作って献呈しました。爽やかで優しかった彼女にぴったりだと思ったからです。気品あるアメリンクの歌唱はこの曲に相応しいものです。

 ♪春へのあこがれK596はすべてが輝く春5月を待ちわびる曲。モーツァルト最後のピアノ協奏曲 第27番K595の第3楽章の主題に詩を付けたもの。T.K.くんお気に入りの楽曲です。

 J.S.バッハの♪コーヒー・カンタータからアリアを入れましたが、これK.T.くんがコーヒー好きだったからではないんです。彼は、近年、喫茶店では決まってミルク・ティー。数年前、私にセラミックのコーヒー・ドリッパーを薦めてくれたんですがね。なにかの加減でコーヒー離れしちゃったのかな。これはもう永遠の謎となってしまいました。

 シューベルトでは♪水の上で歌うが出色。哀感ある旋律と光るさざ波を彷彿とさせるピアノとの対比の妙。時の流れの儚さをアメリンクは深い陰影をもって歌い上げます。1998年の日本映画「華の乱」ではこのアメリンクの歌唱が使われて、シリアスな効果をあげていました。
 今年8月8日の飲み会、K.T.くんは「こんなのが出てきたからあげる」と言って、シューベルトの三大歌曲集のアナログLP 3枚組(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ&ジェラルド・ムーア EMI 1962年録音)を持ってきてくれました。オーディオ・マニアだった彼も最近はアナログLPを聴かなくなっていたのかな。喜んでいただきましたが、これが形見になってしまうとは その時は思ってもみませんでした。三大歌曲の一つ「冬の旅」は絶望して死と背中合わせの旅をする若者の話。でも最後は手回しオルガン弾きの老人に出会い、とにかく生きようとする。絶望もしていなかったK.T.くん。どうして、あんたは死んでしまったんだい!

 ( )付きで挿入したのは、アメリンクのアルバム「Sentimental Me」からの選曲。これはピアノ&ベースのシンプルな編成で、スタンダードな名曲をジャジーに歌う異色作。アメリンクの別の顔が楽しめます。♪ソフィスティケイテッド・レディはデューク・エリントンの名曲。我がエリントンの師・中野憲芳くんが、いつか、「自分は友達が少ないけれど田畑くんは数少ない気の置けない友人のひとり」と語っていました。我が道を往くタイプの中野くんにこう言わせたK.T.くんはやはりみんなに愛されていたんだね。

 クラシック好きだったK.T.くんとは、何度かコンサートをご一緒したものです。記録にあるものをランダムに列記してみましょう。

2009.11.14 海老原みほ ピアノリサイタル (東京文化会館小ホール)
2014.10.24 N響 第1791回 定期演奏会 (指揮:サー・ロジャー・ノーリントン NHKホール)
2014.11.26 N響 第1795回 定期演奏会 (指揮:ネルロ・サンティ サントリーホール)
2017.10.20 N響 第1868回 定期演奏会 (指揮:クリストフ・エッシェンバッハ NHKホール)
2022.12.6 堀米ゆず子 ヴァレリー・アファナシエフ リサイタル (サントリーホール)
2023. 6.11 三井住友海上管弦楽団第41回定期演奏会 (東京芸術劇場)

 これらはほんの一部ですが、印象に残っているのはやはり直近2023年6月11日の演奏会でしょうか。住友海上管弦楽団は私の従妹の長男が所属する企業オーケストラ。会場は池袋の東京芸術劇場。急遽の誘いに、「ブラ1は大好きだから行くよ」と快く駆けつけてくれました。彼は私の長野の実家や御代田の別荘にも遊びに来ており、従妹とも顔なじみ。長野から来た従妹とは歓談の花が咲き久々の旧交を温めていました。この直後、K.T.くんは従妹にクラシックのコンサートやら北海道の自然やらのDVDを送ってくれたそうで、ここらにも彼の優しさが現れています。9月、従妹に彼の訃報を告げたところ、「信じられない。来年2月は『幻想交響曲』、そこでまた って言っていたのに・・・・・」と絶句するだけでした。

 ハリウッドの大スター トム・ハンクスとの遭遇も忘れられない思い出です。2016年9月16日、K.T.くん含む我々友人4人が神田の蕎麦屋「まつや」で飲んでいたら、トム・ハンクス一行が隣のテーブルに座ったのです。まさに予期せぬ出来事。K.T.くんはトム・ハンクスの大ファン。度胸一番、やおら彼に、「あなたの映画は全部見ています。一番好きなのは『グリーンマイル』です」と英語で話しかけました。それからというもの、ハンクス一行と我々が一つのグループと化し、和気藹々「明日に架ける橋」や「上を向いて歩こう」の大合唱となるなどまさに日米大宴会となりました。ハンクス氏が自撮りした宴の写真は翌日ツイッターにあげられて、「トム・ハンクスとジャパニーズ・ヨッパライ」とツイートされ、世界中を駆け巡りました。この大事件のきっかけを作ったのはK.T.君の勇気ある行動だったというわけです。

 オーディオ・マニアだったK.T.くん。最終ライン・アップは、THORENSのプレイヤーTD125mkU〜Mark LevinsonのコントロールアンプML-1L〜Quadのパワーアンプ405〜JBLのスピーカー4343 という超ド級の組み合わせ。尊敬するオーディオ評論家・瀬川冬樹氏の指南によるものでした。
 オーディオが一段落したらアンティーク・カメラに興味を示し、Leica、Nikonなどの銘機を片端しから買い集め、なんと3000万円ほどの資金を投入したとか。なんという凝り性!

 田畑圭一郎くんの死はあまりに突然で衝撃的なものでした。整理しきれない感情を敢えて言葉にすれば・・・・驚愕〜痛恨〜無念〜哀惜〜追慕〜寂寞といったところでしょうか。
 趣味に生き、友情に厚く、穏やかで誰からも好かれたK.T.くん。向こうでもきっと、好きな音楽を聴き、美しい景色を撮影し、楽しく過ごしているんだろうね。元気でいてくれよ。また逢う日まで。
 2023.09.10 (日)  地球沸騰の夏にウクライナを想う
 暑さ容赦ない中、ブダペストで開催された世界陸上。ラスト大逆転投擲で、日本の女子フィールド競技に初の金メダルをもたらしたやり投げの北口榛花、女子4×400mリレーでリベンジの快走を演じオランダ・チームの逆転金メダルに貢献したボルなど、印象的アスリートは数多あれど、私が最も感動したのは女子走り高跳びのウクライナ ヤロスラワ・マフチク選手で、跳躍する姿はまるで一幅の絵画のような優雅さでした。
 昨年2月、思いもよらないロシアの侵攻に、マフチクは即、国外に逃亡。以後、世界各地を渡り歩く苦難の研鑽を積んで迎えた世界陸上の舞台。「私の跳躍が祖国の力になる」と信じて彼女は跳んだ。結果、堂々の金メダル。祖国に希望の光を放ちました。今回はそんなウクライナに対する一文です。

(1)チャイコフスキーの交響曲「小ロシア」

 チャイコフスキーに交響曲 第2番「小ロシア」という曲があります。「小ロシア」はウクライナの別名。ロシアとは違う言語と文化を持ちながら国を持つことが許されず、あくまでロシア帝国の一部として統治されてきました。
 チャイコフスキーは妹が住むウクライナで夏を過ごすのが好きでした。そこで過ごした幸福な気分をもとにウクライナ民謡を取り入れて作ったのが交響曲 第2番 ハ短調「小ロシア」です。初演は1871年1月。1879年に大幅な改訂を施しています。
 第1楽章ではウクライナ民謡「母なるヴォルガを下りて」が、第4楽章では同じく「鶴」のメロディーが主題として使われています。特に第4楽章「鶴」の主題はムソルグスキー「展覧会の絵」の終曲「キエフの大門」のコラールに通じるものがあります。曲想はおしなべてチャイコフスキー独特の抒情感と壮麗さに満ちていますが、根底にはどこかもの悲しさが漂っています。地名を冠した楽曲にはその土地の風土的香りが現れるものですが、同時に歴史を想起させるものもあります。メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」がいい例です。チャイコフスキーもウクライナという土地の歴史的悲哀と、もしかしたらその後降りかかる悲劇を予感していたのかもしれません。

(2)ショスタコーヴィチの交響曲「バビ・ヤール」

 ショスタコーヴィチに交響曲 第13番「バビ・ヤール」という楽曲があります。「バビ・ヤール」はキーウにある渓谷のこと。第2次世界大戦の中、ロシアに進攻したドイツ軍が、ウクライナのユダヤ人を大量虐殺、その後、盛り返したロシア軍が、今度はナチス・ドイツに協力したウクライナ人を処刑するなど、10万人を超える人々の命を奪い葬った忌まわしい場所でした。ウクライナは独ソ戦の戦場となり双方の毒牙に晒された悲劇の土地だったのです。

 交響曲第13番「バビ・ヤール」は1962年の作品。前年、若き詩人エフゲニー・エフトゥシェンコの反ユダヤ主義批判の詩「バビ・ヤール」に感激したショスタコーヴィチは、この詩に基づく交響詩を作曲。その後、これを発展させて5楽章からなる交響曲を完成させました。時はスターリンの死後9年。新たな権力者フルショフは「雪解け」といわれる文化政策を打ち出していました。交響曲「バビ・ヤール」誕生にはこんな背景があったのです。とはいえ規制が完全に外れたわけではなく、完成後幾多の改訂を余儀なくされています。
 編成はバス独唱と男声合唱とオーケストラ。全体に陰鬱な響きが充満する中、ロシアの負の歴史、権力への反抗としてのユーモア、女性への賛美、恐怖の変化と意味、真の出世とは? などが問いかけられます。では、タイトルになった第1楽章「バビ・ヤール」の歌詩の要約を下記。
バビ・ヤールに記念碑はない 切りたつ崖は荒れくれた墓碑のようだ
いまわたしは思う 私はユダヤ人だと  ドレフュス それがわたしであるような気がする
わたしは鉄格子の中にいる わたしは罠にはまった
わたしは思う わたしはあのアンネ・フランクだと 四月の若葉のように 透きとおるアンネ
バビ・ヤールにさんざめく野の草 裁判官さながら脅かすように見おろす木々
ここではみなが無言の叫びをあげる
わたしはここで銃殺された老人のひとりだ わたしはここで銃殺された子供のひとりだ
「インターナショナル」よとどろけ
大地から最後の反ユダヤ主義者が永遠に葬り去られるときに
わたしの血にユダヤの血は流れていない けれどわたしはユダヤ人のごとく憎まれる
荒れくれた敵意で すべての反ユダヤ主義者どもらに
だからこそ わたしはまことのロシア人なのだ
 詩人エフトゥシェンコは、ユダヤ人というだけでスパイの嫌疑をかけられ冤罪に処されたフランスの軍人ドレフュスや「アンネの日記」のアンネ・フランクになりきって、彼らの悲劇を謳っています。そして、ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺と併せて、「ポグロム」という言葉に象徴されるロシアの反ユダヤ主義にもメスを入れます。最初に「私はユダヤ人」と言いながら「私はロシア人」と言って結ぶのはこの現れでしょう。「インターナショナル」とはロシア革命の1917年から1944まで歌われたソヴィエト連邦の国歌。ここにもソ連という国家への皮肉と批判が交錯しています。

 詩が書かれたころには存在しなかった記念碑は、その後次々に建立されました。ナチス・ドイツに殺害されたソヴィエト市民と捕虜の記念碑(1976公開)、虐殺されたユダヤ人を慰霊する記念碑(1991公開)、ソヴィエト軍によって殺害されたウクライナ民族解放運動者を慰霊する木の十字架(1992建設)、バビ・ヤールで殺害された子供たちを慰霊する記念碑(2001公開) 等々。ロシアはこの近辺にも容赦ない攻撃を仕掛けています。これらを始め、プーチン・ロシアは、8月23日までに、ウクライナにおける284の文化遺産に損傷を与え、今後も破壊活動は続くとみられています。いったいこの男はどのような神経の持ち主なのでしょう。

(3)ウクライナの音楽家

 ウクライナは多くの音楽家を輩出しています。ヴァイオリニストでは、ミッシャ・エルマン、ナタン・ミルシテイン、ダヴィッド・オイストラフ、レオニード・コーガン、アイザック・スターン。ピアニストでは、ウラディミール・ホロヴィッツ、スヴァトスラフ・リヒテル、エミール・ギレリス、シューラ・チェルカスキーなど錚々たる名手が名を連ねています。

 彼ら一人一人を紹介するにはとても紙面が足りません。そこで今回は彼らが残した夥しい録音の中から一点を取り上げます。それは、ナタン・ミルシテインのヴァイオリン、ウラディミール・ホロヴィッツのピアノによる「ブラームス作曲:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108」、1950年ニューヨークRCAスタジオでの録音です。演奏は見事の一語に尽きます。ロマンティシズム溢れるホロヴィッツのピアノ。情熱を秘めながら知的抒情性で楽想を締めるミルシテインのヴァイオリン。ブラームスの、ロマン派ヴァイオリン・ソナタの本質を、これほどまでに抉りだした演奏は他になく、聴後には爽やかな優しさが漂います。もしや、これこそがウクライナの音楽家の特質なのかもしれません。

 ミルシテイン(1904-1992)とホロヴィッツ(1903-1989)は、スターリン・ソ連の圧政を逃れるため、1925年12月、そろってソヴィエトを脱出。まずドイツに入国した二人は、以後、パリに長期滞在、1933年にはニューヨークに行きつきます。これらの行程はミルシテインの著書「ロシアから西欧へ」に書かれていて、当時の世界情勢、音楽状況が手に取るようにわかるこれは興味尽きない回想録です。彼はこの著書の中で「ホロヴィッツと私は70年以上にわたっての友人で、おそらく他の誰よりも彼のことを知っていると思う」と述べています。そう、彼らは長年連れ添った刎頸の友なのです。さらに彼の筆は、スターリンとソヴィエトの体制への批判に及びます。
事実、スターリン主義体制はあまりにも抑圧的で、それに比べればヒトラーでさえももっとリベラルと思える。この国の共産主義者のリーダーはロシアのアヴァンギャルドとロシアの総意を破壊した。そして傑出した人々を処刑してしまった。この間、何人のクレムリンのボスが存在しただろうか?たかだか数人である。そしてこれらのほんの一握りの人間が、二億人以上の人々の人生を破滅に追い込んだのだ。こんなことを許す、どのようなシステムも決して正当化されるものではない。
 ウクライナ西部の町リヴィウにはリヴィウ音楽院があります。創立は1853年。モーツァルトの末子クサヴァー・モーツァルトが設立に関わっています。現在、戦火の中、多数の音楽家の卵が明日の平和と未来の成功を夢見て、日々研鑽に励んでいます。

<ゼレンスキー大統領に提言〜これは真夏の夜の夢?>

拝啓 ゼレンスキー大統領殿
 お元気でしょうか。あの忌まわしいプーチン・ロシアの侵攻から早一年半が経過しました。戦争の終結は未だ見通せません。私は、歪んだ歴史観で侵略を正当化するプーチンの大義なるものは、早々に、善良なるロシア国民からそっぽを向かれ、権力の座から引きずり降ろされ、必然的に戦争は終わる と高をくくっていました。ところが未だ変わらずプーチンの支持率は高く、戦争支持率も70〜80%を占めていると聞きます。これは一体どういうことか。ロシア国民て、そんな人たちなのか。
 ニュースを見れば、市場に物は溢れている。撤退したマクドナルドやスターバックスは名前を変え業容を受け継ぎロシア人が経営、昔に増して繁盛しているらしい。日本やヨーロッパが撤退した自動車市場は、中国が取って代わって活況を呈している。アフリカ→UAEからロシアに流れる「金」のルートは経済の命綱の役割を果たしている。建設も農業も好況のようだ。ことほど左様に経済制裁はほとんど利いていない。
 ロシア人の心の奥底には、長年の圧政から、「長いものには巻かれろ」精神が巣くっているといわれています。体制批判をすれば抹殺される。ならば黙っていた方がいい。食べるに事欠いた20〜30年前のゴルバチョフ〜エリツィン時代より、今の方がよっぽどマシだ。ウクライナで戦争をやっていても自分たちに火の粉が降りかかるわけじゃない。加えて、反プーチン派の人々は早々に国を捨てて国外逃亡。だから残った人たちはプーチン肯定派が多数。これじゃ支持率は下がらない。来年3月の大統領選挙もプーチン圧勝は否めない。そうでなくても選挙結果の捏造はお手の物だし。結果、彼はお墨付きを得たとして、悠々と戦争を続けるでしょう。
 ロシアから天然ガスを止められたドイツは、経済が停滞し、第2次世界大戦前に揶揄された「欧州の病人」と呼ばれているとか。アメリカも過度なウクライナ支援にバイデン大統領への批判が噴出しているようです。これは当初ヤワな対応をしたツケではありますが。
 貴国に目を転じると、あなたは先日、武器供与等に敏腕を発揮した有能な国防省レズニコウ氏を解任しました。理由の一つに、地方軍事委員会での兵役免除に関する賄賂横行にあるといわれています。これすなわち、国民の厭戦気分の表れでもありますね。長期化する戦争にウクライナ国民だって嫌気がさしているのではありませんか。

 そこで、ゼレンスキー大統領にお願いです。戦争は日々市井の人々の命を奪います。9月6日、ロシアは、混雑するドネツク州コスチェンスカの商店街にミサイルを撃ち込み17人の命を奪いました。普通に暮らす一般の市民です。ゼレンスキー大統領、何が何でもすぐに戦争を止めてください。戦争を止めるということは戦争を止めないプーチンに譲歩するということ。理不尽極まるプーチンを赦すことになる。冗談じゃないと言われるでしょうね。でも、いま一番大切なことは戦争を止めること。罪もない人々の命を救うこと。それができるのは、ゼレンスキー大統領、あなたしかいないのです。
 プーチンは、貴国に侵攻した昨年2月、一撃であなたは降伏すると楽観視していた。ところがあなたは見事に国をまとめ上げ、世界を味方につけてここまで頑張ってきた。世界は既にあなたの勝利を認めています。ここで戦争を止めても、称賛する人はあれど、非難する人はどこにもいません。だから、どうか戦争を止めてください。

 あの嘘つきプーチンと何をどう取り決めて停戦すればいいのか とあなたは言われるでしょう。ならば、停戦の条件を二つ提示させてください。
 一つは国境の線引きです。ここはゼレンスキーさん、譲歩してください。“すべて元通り”は捨てて、此度ロシアが侵略した地域、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポロジエ州の一部を割譲してやるのです。かつてイギリスがケベック法で示したカナダにおけるフランス系カトリック教徒への対応を参考にしていただきたい。ロシアが強制的に併合した地域に親ロシア派の人がいるのなら国境線の向こうに移ってもらえばいい。
 二つ目は停戦後の安全保障です。プーチンが二度とウクライナに手を出せなくするにはどうすればいいか。ウクライナのNATO加盟。これはプーチンが拒否します。ならば、1994年のブダペスト覚書を持ち出したらどうでしょう。ブダペスト覚書とは、核を手放したウクライナに対してアメリカ、ロシア、イギリスの核保有3か国が安全保障を提供するというもの。無論これは、ロシアが、クリミア侵攻した2014年に破棄しています。しかしながら、この年、米・英・ウクライナの三国は「ブダペスト覚書に関する共同声明」を発している。これを持ち出せばいい。ここに集団的自衛権を含む必要事項を補填する。プーチンには「当面NATO加盟は見送る」と言えばいい。折を見て加盟したところで、嘘つきプーチンに文句を言われる筋合いはないでしょう。

 ゼレンスキー大統領、2019年、あなたが大統領に就任した時の言葉を思い出してください。あなたはこう仰った「これから先、私はウクライナ国民がもう泣かずにすむよう全力を尽くします」と。どうか停戦を目指してください。難しいのはわかっています。でも、あなたが動けば必ず事は動く。私はそう信じています。

<参考資料>
映像の世紀バタフライ・エフェクト「プーチンとゼレンスキー」(NHK-BSP 8.23 O.A.)
ロシアから西欧へ〜ミルシテイン回想録(春秋社)
CDチャイコフスキー作曲:交響曲 第2番「小ロシア」
     アンドレ・プレヴィン指揮:ロンドン交響楽団(1965録音)
CDショスタコーヴィチ作曲:交響曲 第13番「バビ・ヤール」
     マリス・ヤンソンス指揮:バイエルン放送交響楽団(2005)
CDブラームス作曲:ヴァイオリン・ソナタ第3番
     ナタン・ミルシテイン(Vn) ウラディミール・ホロヴィッツ(P)(1950)
 2023.08.16 (水)  若大将・加山雄三の「音楽はみんなともだち」〜似たもの楽曲ア・ラ・カ・ル・ト
(1) 加山雄三はスーパースター

 先日、テレビで昨年の大晦日でコンサート活動を勇退した加山雄三さんの特番をやっていました。題して「輝き続ける加山雄三」。朝日新聞では「語る〜人生の贈り物 加山雄三」が連載。歌に映画に芸能界の王道を歩み続けて65年。「若大将シリーズ」を見まくり、彼のヒット曲を聞きまくり、歌いまくった、まさに我が憧れの大スター加山雄三。これらテレビ、新聞から、クラ未知的に興味深いエピソードをどうぞ。
まだ小学生だったころのこと。うちの三軒となりからピアノの音が聞こえてくる。学校帰り、塀に耳をそば立てて聞いていたら、外国人が出てきて「中に入って聞きなさい」と言う。いきなり「バーン!」ってすごいピアノが流れ出した。あとでわかったけど、ショパンの「英雄ポロネーズ」だった。ものすごく感動してね。うちに帰っておやじ(上原謙)に「あそこでピアノを教えてもらいたい」って話したら、「あの人はなあ、レオニード・クロイツァーという有名なピアニストだ。お前なんかが教えてもらえるような人じゃない」とえらく怒られた。でも結局クロイツァーさんのお弟子さんに教えてもらうようになったんだ。
 なんと加山さんの三軒となりがかのレオニード・クロイツァーのお宅だったとは!スーパースターはなるべくしてなる。そんな星の下に生まれるものなんですね。
 レオニード・クロイツァー(1884-1953)は、戦後わが国音楽界に多大な功績を残したピアニスト&作曲家。1933年、ベルリン音楽大学の教授として二度目の来日の折、近衛秀麿の助言があって、ナチス台頭急なドイツに帰国しなかった。彼はドイツ系ユダヤ人だったのです。在日中の20年間で、彼の教え受けたピアニストは、田中希代子、室井摩耶子、フジ子ヘミング、井口秋子、作曲家では高田三郎、矢代秋雄など錚々たる逸材が名を連ねています。そして、孫弟子?には弾厚作こと加山雄三がいた!

 作曲家・弾厚作には「君といつまでも」1965、「旅人よ」1966、「美しいヴィーナス」1970、「海 その愛」1976、「ぼくの妹に」1976、「サライ」1992・・・・・等々数えきれないほどのヒット曲がありますが、クロイツァーの流れを汲むクラシックの作品もあるんです。「ピアノ協奏曲ニ短調K 213」。その昔、この曲がTV放映されたことがあったとか。K213の「K」は加山のKでありモーツァルトのケッヘル番号にあやかっている。加山さんはモーツァルトが殊のほか好きで、尊敬する人物にアルベルト・アインシュタインを挙げるのも、彼の「死とはモーツァルトを聴けなくなることだ」という名言によるものだとか。ベートーヴェンじゃなくてモーツァルト というのがツボにはまったようです。
 そんなわけで、番組では加山さんの協奏曲とモーツァルトの何番かのピアノ協奏曲が演奏されました。音楽学者ゲストとしてモーツァルトの権威石井宏先生が出演しています。
 石井先生と加山さん、楽屋でモーツァルト談義に花が咲いたそうですが、その中で、加山さん、こう言ったそうです。「ねえ石井さん、俺のピアノ協奏曲もなかなかでしょう。でも、やっぱりモーツァルトは凄いね。俺なんかとても敵わないよ」。これには石井先生、「流石加山雄三、モーツァルトと比べちゃうんだから大物だね」とアングリするしかなかったそうです。スーパースターは言うことが違う!

 あと興味深かったのは、「音楽は真似てもいいんだ」と常々語っていたこと。こんな風に。
九ちゃんの「上を向いて歩こう」が出てきたとき、俺、ビックリしたね。あの曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」と一緒だって気づいてさ。「ジャーン ジャジャジャジャ ジャンジャンジャンジャン」〜「うえをむういて あーるこおおお」。同じじゃん。音楽ってこういうのありなんだと思ったよ。 俺の「君といつまでも」もそう。あれ、ジャズの「明るい表通りで」が元なんだよ。「Grab your coat and get your hat」〜「ふたりを ゆうやみが・・・・・」 なっ、そっくりだろ。音楽ってのは誰かをみんなまねていて、それでつながっているんだよ。違うかい?
 さすが、スーパースター、器がでかい。ところで加山さん、別なところでこんなエピソードを語っていました。曰く「俺をスターにしてくれたのは映画『若大将』シリーズなのは間違いないところ。でもこれ、最初は『若旦那』だったんだぜ。『大学の若旦那』『エレキの若旦那』じゃ、あんなにヒットしなかったんじゃないかな。『若大将』でヨカッタと思うよ」
 次章はそんな若大将になりきって論考する「若大将的似たもの楽曲集」をどうぞ。

(2) 若大将が語る 似たもの楽曲ア・ラ・カ・ル・ト

 歌謡界に「黄金の音形」というのがあって、それは♪ミラシド(シ)・・・なんだよな。元をたどればサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」の冒頭のメロディーだから誰でもわかるよね。これを使ったのはいくつもあるけど、すぐ浮かぶのは上田正樹の「悲しい色やね」かな。“にじむまちのひを” のところね。あとは、井上陽水の「心もよう」“さみしさのつれづれに”。石川セリ「八月の濡れた砂」“わたしのうみを”。サザン・オールスターズ「チャコの海岸物語」“かいがんで わかいふたりが”。中村雅俊「恋人も濡れる街角」“ふしぎなこいは”。竹内まりや「駅」“みおぼえのある”等々ほかにもたくさんあるよ。俺の曲では「幻のアマリリア」がそう“ゆきのふるみずうみに” な。
 あと、タモリが茶化して云ってるよね。「『悲しい色やね』だけどさ、あれサンタナの「哀愁のヨーロッパ」だよ」って。なるほど、その通りだ。洋楽では「いそしぎ」のテーマやシャンソン「パリの空の下」。それから「コーヒー・ルンバ」もな。
 日本の流行歌では、まずは「高校三年生」“あかいゆうひが”だな。あと遡って、西田佐知子「赤坂の夜は更けて」〜井沢八郎「あゝ上野駅」〜織井茂子「君の名は」〜岡本敦夫「白い花の咲く頃」〜淡谷のり子姐さんの「別れのブルース」〜滝廉太郎「荒城の月」〜熊本県民謡「五木の子守唄」に行きつく。「黄金の音形」は、和洋横断まさにグローバルなヒット音形なんだ。

 お次は俺の大好きなモーツァルト。「フルートとハープのための協奏曲K299」第1楽章の第1主題が、そっくりそのままブルックナーの「交響曲第7番」第1楽章に出てくる(1978年録音のハイティンク指揮:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団なら開始から6:30あたりのところ)。
 リストの「愛の夢」第3番はシューベルトの「即興曲D.899第3番 変ト長調」に生き写し。まるで兄弟みたいな曲だよ。同じシューベルトの交響曲 第8番 ハ長調 「グレート」D.944 第1楽章の第1主題は早稲田大学応援歌「紺碧の空」(古関裕而作曲)にそのまま転用されている。また、早稲田の校歌「都の西北」はイエール大学の学生歌とソックリなのも有名な話だな。

 シューベルトといえば歌曲集「白鳥の歌」の「鳩の使い」が、なんとトニー・ザイラー主演1959年の映画「白銀は招くよ」の主題歌にそっくり投影されている。「鳩の使い」の最後の一節 Drum heg ich sie auch so true an der Brust(だから僕も すばらしい結果を信じ切って)と「白銀は招くよ」の“何だか今日はいいことがありそうな気がするよ”はドンピシャ同メロ。作曲のフランツ・グローテ(1908-1982)はドイツ人だから、彼の体内にシューベルトの旋律が入っていたんだろう。彼の代表作には「真夜中のブルース」がある。トニー・ザイラーといえば、俺の映画「アルプスの若大将」に通行人風に出演してもらってる。ウィーン・ロケのとき偶然会ったんだよ。暇があったら確認してみてよ。

 あとサン・サーンスの「ピアノ協奏曲第2番」第2楽章のBメロ。ありゃ「スター・ウォーズ」だよ。ジョン・ウィリアムズがパクったかどうかはわからないけどね。俺が持ってるサン・サーンスはルービンシュタイン(ピアノ)のRCA盤だけど、この音がとてつもなくいい。1958年の録音だからもう65年前になるけどビックリするくらいの瑞々しさだ。夏場はよく聴くよ。このピアノは一服の清涼剤だね。

 バーンスタインのミュージカル「ウェストサイド物語」にはワーグナーからの転用があるね。物語のラストに流れる「サムホエア」の中に印象的なメロディーが顔を出す。これ「指環」の「愛の救済の動機」♪ドーシドレードシ・・・だ。対立する二つのグループが「憎しみの連鎖を断ち切るには愛による救済しかない」とするバーンスタインのメッセージが込められている。これはパクリじゃなくてオマージュだと 俺は思う。

 「ウェストサイド物語」の「サムホエア」の中にはもう一つ印象的なメロディーがあるよ。経過句的な♪シードレミファソーミド なんだけど、これを久石譲が「風の谷のナウシカ」で使っている。この人、ミニマル・ミュージックの信奉者だから、おそらく人の心に食い入るようなメロディーが書けないんだろうね。だからそんなのが欲しけりゃ借用するしかない。だって、ジブリ映画の名主題歌は「ひこうき雲」(風立ちぬ)や「やさしさに包まれたなら」(魔女の宅急便)でユーミンだろ。で、「風の谷のナウシカ」はyou-tubeのオーケストラ版「Nausica of the Valley of the Wind」3:02〜3:18あたりで確認してみて。これはパクリだってわかると思うよ。

 今評判のTBSのドラマ「VIVANT」の音楽は千住明くん。千住くんといえば、創美時代、彼のデビュー・アルバム「ピードモント・パーク」とそれに続く「226 Suite」のプロモーションの打ち合わせで田園調布のお宅に伺ったことがある。もう30年以上前の話だ。居間で明くんと話していたとき、二階からヴァイオリンの調べが聞こえてきた。たぶんバッハの無伴奏だったと思うけど、それはそれは美しい響きだった。音が鳴り止んで「兄がお世話になっています」と現れたのがヴァイオリニストの妹真理子さんだった。聞けばその日、待ちに待ったストラディヴァリウスが届いたって言ってたね。
 明くんには日本画家の兄博さんがいる。以前テレビで見たが、「高野山の襖絵」を描く姿は感動的だった。44面の襖に重力に任せて墨を乗せてゆく。宇宙の摂理と空海の宗教観が一体となってとてつもない芸術作品が出来上がっていった。博・明・真理子の千住三兄弟(妹)、いったいどんなDNAを持っているんだろうね。
 それはそうと、「VIVANT」でモンゴルの砂漠に流れる明くんの音楽、こいつはエルガー「威風堂々」だ と感じる瞬間があるね。
 でまた、NHK朝ドラ「らんまん」の音楽担当は阿部海太郎という人。この音楽、ドラマの胆で流れるのはラフマニノフそのもの。まあいいけど、もうちょっと工夫がほしいよな。

 とまあ、いろいろ書いてきましたが、こんな風に似たもの楽曲は巷に溢れております。たった12音の組み合わせなんだから似通っても当然でしょう。目くじらを立てずにそんなつながりを楽しむのも一興でしょうか。似たもの楽曲はまだまだあります。これらはまたいつの日か「クラ未知」で。本日はご清聴ありがとう。若大将でした。

<参考資料>
BSフジ「輝き続ける若大将」2023.7.15 O.A
朝日新聞「語る〜人生の贈り物 加山雄三」2023年7〜8月連載
TBSドラマ「VIVANT」現在放映中
 2023.07.13 (木)  ちょっと変!? 流行歌の歌詞いろいろ
(1)ルビーの指環の場合、そして「二隻の舟」

 先日、TVの歌番組に登場した黒柳徹子さん、「あなたの人生を変えた音は?」の問いに対し、「なんといってもベートーヴェン『第九』。忘れられない楽曲というなら『ルビーの指環』」と答えていました。「第九」はなんでも、N響のコンマスをやっていた御父上が「年末は『第九』」を定着させ、そのとき合唱に加わった音楽学校の女生徒に一目惚れして結婚、誕生した女の子が徹子さんだったということです。「第九」なかりせば徹子さんはこの世に生まれなかった というわけです。
 「ルビーの指環」は徹子さん司会のTBS歌のベスト10で不滅の12週連続第1位に輝いた大ヒット曲。これぞ忘れられない歌だとか。詞は松本隆、曲と唄は寺尾聰。では、この歌の歌詞を一部抽出してみましょう。
そうね誕生石ならルビーなの
そんな言葉が頭に渦巻くよ
あれは8月 目映い陽の中で
誓った愛の幻
 これ違和感ありませんか? ルビーは7月の誕生石。ならば「あれは7月」と来るのが普通。それとも「ペリドットの指環」にしましょうか。でも、これじゃ売れませんね。ではなぜ8月なのか。これはたぶん、整合性よりも歌詞としての語呂の良さをとったのでしょう。確かに「シチガツ」より「ハチガツ」の方が歌いやすいし訴求力もある。「誕生石は7月のルビー、愛を誓ったのは8月。別におかしくないでしょう」と才人作詞家松本隆にニヤリ笑って言われそうですね。でもなあ・・・・・。
 なお、これは余談ですが、寺尾聰に「出航SASURAI」という曲がありまして。この曲、最近も平松剛法律事務所のイメージソングとしてTV-CMで流れていますが、これを作詞した有川正沙子は本名山口えみさん。私のRCAレコード時代の仕事仲間です。彼女は洋楽、私は邦楽と接点はあまりなかったですが、今ごろどうしているのかなあ。

 中島みゆきさんに「二隻の舟」という楽曲があります。歌詞の核を下記。
お前と私はたとえば二隻の舟
ひとつずつの そしてひとつの
敢えなくわたしが 波に砕ける日には
どこかでお前の舟がかすかにきしむだろう
それだけのことで わたしは海をゆけるよ
たとえ舫い綱は切れて 嵐に飲まれても
 「二隻の舟」の“隻”の読みは“せき”。ところがみゆきさん、わざわざ“そう”とルビを振っている。“そう”と読ませたいなら「二艘の舟」ならスンナリです。詞の内容から一人乗りだから小舟を意味する「二艘の舟」でいいはず。最初はこう書いたのかもしれません。でも字を眺めているうちに「艘」より「隻」が字面的にシックリくると感じたのでしょう。そこで「二隻の舟」と書いて「にそうのふね」と読ませた。ひとつずつだけど一つの舟。私が波に砕けたら、お前の舟はかすかにきしむ ほどの一体感。これがあれば私は海をゆける。舟は小さいけれど気持ちは大型船。ならば“隻”が相応しい。みゆきさんにとって、「二隻(そう)」は必然だったということでしょう。これぞ中島みゆきの感性です。それにしてもいい歌です。「それだけのことで 私は海をゆけるよ」なんてね。この曲は1992年のアルバム「EAST ASIA」に収録されていて、他に「糸」「誕生」が入っている これはとてつもないアルバムであります。

 中島みゆきさんで、どうでもいい話を二つばかり。

 「元気ですか」という楽曲があります。楽曲といってもメロディーなしのセリフのみ。さだまさしの「北の国から」の真逆の形。内容は、振られた女が振った男の今の彼女に電話して「ああだこうだ」と云いつらう、実に嫌な女のお話です。
 「元気ですか」といえばアントニオ猪木の専売フレーズ。猪木さんがこのフレーズを使い出したのはいつ? を調べたところ、どうやら1989年、スポーツ平和党を結成して国政に打って出た時のようです。みゆきさんの「元気ですか」は1978年のアルバム「愛していると云ってくれ」に収録されているので、こちらが10年以上も早い。だからといって、猪木さんがみゆきさんの楽曲をヒントに思いついたとは考えられません。単なる偶然の一致でしょう。それにしても同じ「元気ですか」の猪木さんの明に対するみゆきさんの暗。好対照もいいところです。

 もう一つ。みゆきさんには「勝手にしやがれ」という楽曲があります。言わずもがな、ジュリー・沢田研二に同名曲があって、これ彼の最大のヒット曲。内容は、ジュリーのは「出てゆくなら勝手に行きな。戻りたくなりゃいつでもおいで」、みゆきさんは「右へ行きたきゃ右へ行けば。あたしは左。でも、心はなれてはじめて気づく。あんたのわがままがほしい」。どこか似ていますよね。
 そこで、両者の発売日を調べたら、みゆきさんが1977年6月25日(アルバム「あ・り・が・と・う」に収録)。沢田研二は1977年5月21日と僅か1か月違いでした。これはどっちがどっちをどうしたとは言えません。これも単なる偶然の一致ということでしょう。お粗末の二題でした。

(2)曲者タモリに関して

 NHK-TVに「ブラタモリ」という番組があります。視聴率もなかなか。タモリが各地を回って地理的側面から土地土地の形相を炙りだす番組。その土地に詳しい歴史家、地理学者、考古学者等がタモリを案内しながら回る、実に贅沢な番組です。そこで専門家がタモリに質問を放つ。
 6月24日O.A.の「関ケ原編」では、東軍の将・黒田長政が西軍の将・島左近を撃った場面が再現されまして。タモリと学者が、黒田の鉄砲隊が島に気づかれないように近づいた窪んだ側道を歩きます。そこで専門家、「タモリさん、この道なんだと思いますか」と訊く。タモリ、考える。脳の回路を表わすような“キュッ キュッ”てな擬音が鳴る。タモリ、思い出したように「コレ、関ケ原断層ですか」と答える。どうもこのあたり、ヤラセ感見え見えなんですね。こんなのが番組中に十数回は出てくるんです。タモリさん、知っていたかもしれないけれど、どうせ直前までに頭に詰め込んだんでしょう。それをあたかも記憶を引っ張り出すかのような雰囲気を醸す。なんか鼻に付くんですよ。まあ、こんな風にして、“インテリ大御所芸人・タモリ”というイメージが作られてゆくんですね。

 “芸能界七不思議”のひとつに 「笑っていいとも!テレフォンショッキング」にさだまさしが一度も登場しなかった というのがありまして。「笑っていいとも!」は、1982年から2014年までの32年間、平日のお昼時にO.A.された人気番組でした。テレフォンショッキングはこの番組の看板コーナーで、ゲストがタモリと会話してその友達にリレーして繋いでゆく というもの。最多登場は22回の和田アキ子だそうです。で、有名無名を問わず、大抵の芸能人は呼ばれているんですね。8054回もやってるわけですから。
 さだまさしほどの有名人が一度も登場してない と気づいた私。これはどうもおかしいぞ。二人の間に何かあるはずと踏んで、あれこれ考えを巡らすと、ふとあるものにブチ当たりました。タモリはさだまさしが大嫌いだったのです。その証は「タモリ3〜戦後日本歌謡史」というレコードにありました。

 「タモリ3〜戦後日本歌謡史」は、1981年発売のタモリ3枚目のレコード。終戦直後から30年間ほどのヒット曲30数曲を、面白おかしく替え歌にして毒のある揶揄トークを交えて綴ったタモリの独演LPです。例えば、舟木一夫「高校三年生」は馬木一夫「放浪三年生」、三波春夫「世界の国からこんにちは」は三波伸夫「世界の国からさようなら」、松山千春「季節の中で」は松林痴春「施設の中で」という具合。このころのタモリはとんがっていて本当に面白かった。今は見る影もありませんが。
 その中の(曲ではありませんが)「オールナイトニホン」という喋りのコーナーで、タモリはさだまさしをズタズタにブッタ斬ってるんですね。その一部始終を下記。
とにかく、まだ、なんでさだが売れるかって二年半も言い続けてきてるわけね。あれはなにか日本人の全部悪いところをね、なんか前面に出してるのよ。なんかそうじゃなくて、オレたちが日本人の後ろに退がろう後ろに退がろうとしたところを聞いててね、なんかそれがイヤだから前に出て行こうと各分野でやってたわけよね。だから、音楽の分野ではそれなかった。小説の分野ではさ。ま、あるよ、そりゃ、日本人の中にはさ、変に対抗的な意識、後ろに退がろう、ジメジメしようっていうのはね。でも音楽の世界にはなかったの。それをさだがさあ、それをあれがやったわけじゃない。鶴光みたいな顔してさ。これがね、気に食わないわけよね。これね、やるのはしょうがないけどね、だが、そんなものを買う音楽的状況ね。もう女子高校生だの中学生のブスが買いまくるんだよ。やさしさだとか何とかいいながらね。これが俺、気に食わない。こんなことじゃね、もう、日本の文化状況はもはやご破算になっちゃったと同じなんだよ。もうどうしようもないね。あれ歯茎は歯槽膿漏だよ。
 毒舌といってもこれは誹謗中傷。特に最後の一行はまずい。このレコード、あまりに過激すぎると即発禁、やがて、大手レコード店「新星堂」が一社発売したもの。とはいえ、市場には5万枚ほどは出回ったと思われます。私も当時新星堂盤を手に入れました。
 これを聞いたさだまさしは「なんでここまで」と憤慨したでしょうし、やったタモリは「やり過ぎた」と反省したでしょう。でも、和解の機会なきまま今日に至る でしょうか。タモリがテレフォンショッキングにさだまさしを呼ばなかった(呼べなかった)理由はこれだと思います。

 オット、本題に戻りましょう。ところでタモリですが、いつか、なにかのテレビでこんな話をしていました。
あのさあ、昔の歌謡曲には変な歌詞があるよね。例えばこんなの。「パイプくわえて 口笛ふいて」だってさ。こんなことできるわけないよね。
 確かにパイプくわえて口笛は吹けません。でも、こんな歌は存在しないのです。菊池章子の「星の流れに」の歌詞には「たばこふかして 口笛ふいて」という一節があります。これなら可能ですね。同時にとは言ってないので。
 そこで、もう一曲。美空ひばりの「ひばりのマドロスさん」にはこんな歌詞がある。「縞のジャケツのマドロスさんは パイプふかして アー タラップのぼる」。私、思うのですが、タモリの中でこの二つがゴッチャになっちゃったんじゃないかと。もっと穿ってみれば、確信犯的受け狙いで「パイプくわえて口笛ふいて」と作文しちゃったのかもしれません。曲者タモリならやりかねませんね。

 今回、山上路夫作詞「岬めぐり」のオカシな部分や、橋本淳のケッサクGS歌詞にも触れたかったのですが、紙面の都合で次回以降に回しましょう。どうか、ご期待ください。



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2015/02/10 (火)  中東にレクイエムを
2015/01/25 (日)  映画「バンクーバーの朝日」と沢村栄治
2015/01/13 (火)  新年に寄せて with Rayちゃん
2014/12/25 (木)  2014ランダム回顧 with Rayちゃん
2014/12/10 (水)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究11〜
          バッハ第3の不易流行「バッハはユーミンの先導師」

2014/11/25 (火)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究10〜バッハ第2の不易流行「平均律」
2014/11/10 (月)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究9〜バッハ不易流行その1「対位法」
2014/10/25 (土)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究8〜「旅に病んで」の深意
2014/10/10 (金)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究7〜果てしなき不易流行
2014/09/025 (木)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究6〜「おくのほそ道」に「不易流行」を探る
2014/09/05 (金)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究5〜芭蕉における「不易流行」の概念
2014/08/05 (火)  Jiijiのつぶやき〜葉加瀬太郎 間違いだらけの音楽講座
2014/07/25 (金)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート 番外編〜出た!蓮實重彦のとんでもない論評
2014/07/20 (日)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート6 〜 ドイツ優勝と大会総括
2014/07/13 (日)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート5 〜 最後に綻んだファンハール采配
2014/07/11 (金)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート4 〜 戦犯はダビドルイス
2014/07/08 (火)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート3 〜 ベスト4出揃う
2014/06/30 (月)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート2 〜 グループリーグに異変
2014/06/26 (木)  2014ブラジル・ワールドカップ・リポート1 〜 日本終戦にJiijiの提言
2014/06/25 (水)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究4〜「おくのほそ道」に見る対置 Contraposition の妙
2014/06/10 (火)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究3〜J.S.バッハ シンメトリーの意識
2014/05/25 (日)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究2〜「ゴールドベルク変奏曲」に見る宇宙観
2014/05/05 (月)  芭蕉とバッハ:作品に潜む共通性の研究1〜芭蕉の宇宙観
2014/04/15 (火)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する7〜ある作曲家の論評
2014/04/01 (火)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する6〜拝啓 神山典士様
2014/03/20 (木)  Jiijiのつぶやき〜春なのに
2014/03/11 (火)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する5〜フィクサーXの存在
2014/03/01 (土)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する「最終回」〜長木誠司はとんでもない
2014/02/25 (火)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する3〜許光俊の前代未聞の推奨文
2014/02/20 (木)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する2〜本当に知らなかったのか?
2014/02/16 (日)  驚愕のペテン師・佐村河内守を考察する1〜空前絶後の事件
2014/02/10 (月)  Jiiijiのつぶやき〜春呼ぶクラシック
2014/01/25 (土)  クラウディオ・アバド追悼
2014/01/20 (月)  Jiijiのつぶやき〜年末年始エンタメ編
2014/01/10 (金)  Jiijiのつぶやき〜年末年始スポーツ編
2013/12/15 (日)  閑話窮題〜GlobalクリスマスSongs
2013/12/05 (木)  晩秋断章〜今年の秋は回帰がテーマ
2013/11/20 (水)  上原浩治&ボストンの奇跡2〜「ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ」
2013/11/10 (日)  上原浩治&ボストンの奇跡1〜それは「スイート・キャロライン」から始まった
2013/10/31 (木)  閑話窮題〜天野祐吉さん死す
2013/10/25 (金)  閑話窮題〜「ベートーヴェンとベートホーフェン」
2013/10/10 (木)  私的「下山事件論」最終回〜時代に殺された下山定則
2013/09/15 (日)  閑話窮題〜突然の贈りもの
2013/09/02 (月)  閑話窮題〜「風立ちぬ」を観て
2013/08/25 (日)  私的「下山事件論」5〜事件当時の情勢
2013/08/10 (土)  私的「下山事件論」4〜矢板玄の話 後編
2013/07/22 (月)  閑話窮題〜映画「25年目の弦楽四重奏」を見て
2013/07/20 (土)  閑話窮題〜サプライズ連発のコンサート
2013/07/17 (水)  閑話窮題〜ソムリエ検定奮闘記
2013/07/10 (水)  私的「下山事件論」3〜矢板玄の話 前編
2013/06/25 (火)  私的「下山事件論」2〜犯人の行動を追う
2013/06/10 (月)  私的「下山事件論」1〜事件の本質とあらまし
2013/05/25 (日)  閑話窮題〜風薫る季節に
2013/05/15 (木)  「魔笛」と高山右近12〜松本清張「モーツァルトの伯楽」を読んで
2013/04/25 (木)  「魔笛」と高山右近11〜高山右近は「魔笛」の中に生きている
2013/04/15 (月)  閑話窮題〜今年のマスターズは二日目15番タイガーの第3打で終わった
2013/04/10 (水)  「魔笛」と高山右近10〜モーツァルトに高山右近が降臨!
2013/03/25 (月)  「魔笛」と高山右近9〜ウィーンでの再会と「魔笛」への着手
2013/03/10 (日)  「魔笛」と高山右近8〜フリーメイソンへの入会
2013/02/25 (月)  「魔笛」と高山右近7〜人生最大の転機
2013/02/10 (日)  「魔笛」と高山右近6〜ミュンヘンからウィーンへ
2013/01/31 (木)  「魔笛」と高山右近5〜シカネーダーという男
2013/01/25 (金)  「魔笛」と高山右近4〜モーツァルトとウコンドノの接点
2012/12/25 (火)  「魔笛」と高山右近3〜「ティトス・ウコンドノ」という宗教劇
2012/12/10 (月)  「魔笛」と高山右近2〜モーツァルトとミヒャエル・ハイドン
2012/11/25 (日)  「魔笛」と高山右近1〜タミーノは高山右近か?
2012/11/05 (月)  大滝秀治最後の台詞に健さんが涙したわけ
2012/10/25 (木)  リアリズムよりリリシズム〜「あなたへ」を観て読んで
2012/10/20 (土)  村上春樹と尖閣問題とノーベル賞と そして、山中教授
2012/10/05 (金)  尖閣問題の真相〜それは田中角栄の不用意な発言から始まった
2012/09/05 (水)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピックE
2012/08/25 (日)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピックD
2012/08/15 (水)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピックC
2012/08/13 (月)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピックB
2012/08/10 (金)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピックA
2012/08/07 (火)  ロンドン五輪2012/意外性と歴史回顧のオリンピック@
2012/07/25 (水)  私の中の中島みゆき5−中島みゆきは“演歌”である4
2012/07/10 (火)  私の中の中島みゆき4−中島みゆきは"演歌"である3
2012/06/27 (水)  閑話窮題〜波動スピーカーなど
2012/05/31 (木)  閑話窮題〜風薫る季節の中で
2012/05/20 (日)  私の中の中島みゆき3−中島みゆきは"演歌"である2
2012/05/10 (木)  私の中の中島みゆき2−中島みゆきは"演歌"である1
2012/04/20 (金)  私の中の中島みゆき1〜私的一元的中島みゆき論
2012/04/05 (木)  痛快!芥川賞作家田中慎弥D 記者会見発言の真相
2012/03/20 (火)  痛快!芥川賞作家田中慎弥C 作家としての石原慎太郎
2012/03/10 (土)  痛快!芥川賞作家田中慎弥B「共喰い」を読んで
2012/03/01 (木)  痛快!芥川賞作家田中慎弥A「ポトスライムの舟」VS「神様のいない日本シリーズ」
2012/02/20 (月)  慎んで「懺悔の記」
2012/02/15 (水)  緊急臨発!もう一つの芥川賞作品を考証する
2012/02/10 (金)  痛快!芥川賞作家田中慎弥@「神様のいない日本シリーズ」の面白さ
2012/02/05 (日)  FM放送
2012/01/25 (水)  小澤征爾 日本の宝
2012/01/10 (火)  閑話窮題〜2012新年雑感
2011/12/25 (日)  閑話窮題〜2011今年も暮れ行く
2011/12/05 (月)  「究極のシューベルト歌曲集」キャプション31−40
2011/11/25 (金)  「究極のシューベルト歌曲集」キャプション21−30
2011/11/15 (火)  閑話窮題〜リュウちゃんのシューベルト超天才論
2011/10/31 (火)  「究極のシューベルト歌曲集」キャプション11−20
2011/10/25 (火)  「究極のシューベルト歌曲集」キャプション1−10
2011/10/13 (木)  「究極」ついに完成
2011/09/30 (金)  「ローレライ」は「春の夢」から生まれた
2011/09/20 (火)  「白鳥の歌」から
2011/09/11 (日)  「冬の旅」から
2011/08/31 (水)  「さよならドビュッシー」を読んで〜不協和音の巻2
2011/08/25 (木)  「さよならドビュッシー」を読んで〜不協和音の巻1
2011/08/15 (月)  「さよならドビュッシー」を読んで〜協和音の巻
2011/07/31 (日)  閑話窮題〜とんでもないサッカー論
2011/07/25 (月)  閑話窮題〜「なでしこジャパン」クラ未知的総括
2011/07/10 (日)  閑話窮題〜「シェエラザード」にまつわるエトセトラ
2011/06/30 (木)  大震災断章[9] 圧巻の長渕 剛
2011/06/20 (月)  大震災断章[8]届け!音楽の力〜海外アーティスト編
2011/06/05 (日)  大震災断章[7]赤子の特権で踊り捧げる
2011/05/25 (水)  大震災断章[6]自民党よ、あんたに言われる筋合いはない
2011/05/20 (金)  大震災断章[5]菅直人を戴く不幸
2011/05/12 (木)  大震災断章[番外編] 東北に捧げるアダージョ
2011/05/09 (月)  大震災断章[4] エネルギー政策の正しいあり方
2011/04/30 (土)  大震災断章[3] 原発をどうする
2011/04/25 (月)  大震災断章[2] 原発事故は人災
2011/04/20 (水)  大震災断章[1] 想定外は恥
 2011/03/23 (水)  シューベルト歌曲の森へ21 なんてったって「冬の旅」14
<「辻音楽師」の調性における定説に、敢えて疑問を投じる 最終回>
 2011/03/10 (木)  シューベルト歌曲の森へS なんてったって「冬の旅」13
<「辻音楽師」の調性における定説に、敢えて疑問を投じる その4>
 2011/02/25 (金)  シューベルト歌曲の森へR なんてったって「冬の旅」12
<「辻音楽師」の調性における定説に、敢えて疑問を投じる その3>
 2011/02/15 (火)  シューベルト歌曲の森へQ なんてったって「冬の旅」11
<「辻音楽師」の調性における定説に、敢えて疑問を投じる その2>
 2011/02/05 (土)  シューベルト歌曲の森へP なんてったって「冬の旅」10
<「辻音楽師」の調性における定説に、敢えて疑問を投じる その1>
2011/01/20 (木)  閑話窮題――地デジ化の効用
2011/01/10 (月)  シューベルト歌曲の森へO なんてったって「冬の旅」9<いかがなものかこの本は!>
 2010/12/25 (土)  シューベルト歌曲の森へN なんてったって「冬の旅」8
<「最後の一葉」は「最後の希望」がべース の根拠>
2010/12/10 (金)  シューベルト歌曲の森へM なんてったって「冬の旅」7 <シューベルトとオー・ヘンリー>
2010/11/29 (月)  シューベルト歌曲の森へL なんてったって「冬の旅」6 <「冬の旅」は僕の分身>
2010/11/19 (金)  シューベルト歌曲の森へKなんてったって「冬の旅」5 <これですべてが読めた!>
2010/11/10 (水)  シューベルト歌曲の森へJなんてったって「冬の旅」4 <シュ−ベルト戸惑う>
2010/10/28 (木)  シューベルト歌曲の森へIなんてったって「冬の旅」3 <ミュラー順番決定の真相>
2010/10/18 (月)  シューベルト歌曲の森へHなんてったって「冬の旅」 2<「勇気」におけるミュラーの事情>
2010/10/07 (木)  シューベルト歌曲の森へGなんてったって「冬の旅」1<曲順の謎>
2010/09/22 (水)  シューベルト歌曲の森へF法隆寺のリュウちゃん6「すぐに権威にならないで!」
2010/09/03 (金)  シューベルト歌曲の森へE法隆寺のリュウちゃん5「拙速は禁物」
2010/08/23 (月)  シューベルト歌曲の森へD法隆寺のリュウちゃん4「野ばら」は鈍感?
2010/08/09 (月)  シューベルト歌曲の森へC〜フェリシティ・ロット
2010/07/26 (月)  シューベルト歌曲の森へB〜法隆寺のリュウちゃん3「ひとまず 3大歌曲集以外へ」
2010/07/15 (木)  シューベルト歌曲の森へA〜法隆寺のリュウちゃん2「涙の雨」
2010/07/07 (水)  シューベルト歌曲の森へ@〜法隆寺のリュウちゃん1「三大歌曲集」
2010/06/24 (木)  シューベルト歌曲の森へ〜プロローグ
2010/06/07 (月)  シューベルト1828年の奇跡19〜キルケゴールとシューベルトA
2010/05/30 (日)  シューベルト1828年の奇跡18〜キルケゴールとシューベルト@
2010/05/10 (月)  ショパン生誕200年 独断と偏見による究極のコンピレーション
2010/04/22 (木)  シューベルト1828年の奇跡17〜ブレンデルとポリーニ3
2010/04/14 (水)  映画「ドン・ジョヴァンニ」〜天才劇作家とモーツァルトの出会い を観て
2010/04/09 (金)  シューベルト1828年の奇跡16〜ブレンデルとポリーニ2
2010/03/31 (水)  シューベルト1828年の奇跡15〜ブレンデルとポリーニ1
2010/03/21 (日)  シューベルト1828年の奇跡14〜内田光子の凄いシューベルト2
2010/03/11 (木)  シューベルト1828年の奇跡13〜内田光子の凄いシューベルト1
2010/02/24 (水)  シューベルト1828年の奇跡12〜アインシュタイン、その引用の謎C
2010/02/15 (月)  シューベルト1828年の奇跡11〜アインシュタイン、その引用の謎B
2010/01/29 (金)  シューベルト1828年の奇跡10〜アインシュタイン、その引用の謎A
2010/01/20 (水)  シューベルト1828年の奇跡9〜アインシュタイン、その引用の謎@
2010/01/11 (月)  永ちゃんとリヒテル
2009/12/25 (金)  シューベルト1828年の奇跡8〜ミサ曲第6番
2009/12/09 (水)  シューベルト1828年の奇跡7〜駒からはなれよ
2009/11/26 (木)  シューベルト1828年の奇跡6〜「グレート、この偉大な交響曲」E
2009/11/16 (月)  シューベルト1828年の奇跡5〜「グレート、この偉大な交響曲」D
2009/11/06 (金)  シューベルト1828年の奇跡4〜「グレート、この偉大な交響曲」C
2009/10/26 (月)  シューベルト1828年の奇跡3〜「グレート、この偉大な交響曲」B
2009/10/17 (土)  シューベルト1828年の奇跡2〜「グレート、この偉大な交響曲」A
2009/10/07 (水)  シューベルト1828年の奇跡1〜「グレート、この偉大な交響曲」@
2009/09/29 (火)  Romanceへの誘いG「ブラームスはワルツが好き?」
2009/09/21 (月)  Romanceへの誘いF「シューベルトはソナタが苦手?」その5
2009/09/16 (水)  Romanceへの誘いE「シューベルトはソナタが苦手?」その4
2009/08/31 (月)  Romanceへの誘いD「シューベルトはソナタが苦手?」その3
2009/08/24 (月)  Romanceへの誘いC「シューベルトはソナタが苦手?」その2
2009/08/17 (月)  Romanceへの誘いB「シューベルトはソナタが苦手?」その1
2009/08/03 (月)  Romanceへの誘いA「ドメニコ・スカルラッティとJ.S.バッハは同期の桜」
2009/07/20 (月)  Romanceへの誘い@「セザール・フランク二つの顔」
2009/06/29 (月)  茂木健一郎氏クオリア的冬の旅――3
2009/06/22 (月)  茂木健一郎氏クオリア的冬の旅――2
2009/06/15 (月)  茂木健一郎氏クオリア的冬の旅――1
2009/06/01 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――最終回
2009/05/25 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――8
2009/05/18 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――7
2009/05/11 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――6
2009/04/27 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――5
2009/04/13 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――4
2009/04/06 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――3
2009/03/30 (月)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――2
2009/03/21 (土)  バッハ・コード〜「ロ短調ミサ」に隠された謎――1
2009/03/09 (月)  閑話窮題――チャイ5
2009/03/02 (月)  閑話窮題――「フィガロの結婚」真実の姿 後日談
2009/02/23 (月)  閑話窮題――もう一度吉田秀和を斬る
2009/02/09 (月)  生誕100年私的カラヤン考――最終章
2009/02/02 (月)  生誕100年私的カラヤン考――7
2009/01/26 (月)  生誕100年私的カラヤン考――6
2009/01/19 (月)  生誕100年私的カラヤン考――5
2009/01/12 (月)  生誕100年私的カラヤン考――4
2008/12/29 (月)  生誕100年私的カラヤン考――3
2008/12/22 (月)  生誕100年私的カラヤン考――2
2008/12/15 (月)  生誕100年私的カラヤン考――1
2008/12/01 (月)  ケネディ追悼 モーツァルト「レクイエム」に纏わる石井宏と五味康祐
2008/11/17 (月)  石井宏のこの一枚を聴け!
2008/11/10 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――7=エピローグ
2008/10/27 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――6
2008/10/13 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――5
2008/10/06 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――4
2008/09/29 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――3
2008/09/22 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――2
2008/09/15 (月)  これってタブー?〜吉田秀和を斬る――1
2008/09/01 (月)  真夏の夜の支離滅裂――小林秀雄を斬る 2
2008/08/25 (月)  真夏の夜の支離滅裂――小林秀雄を斬る 1
2008/08/11 (月)  二つのバイロイトの第九――エピローグ
2008/08/04 (月)  二つのバイロイトの第九――その2
2008/07/29 (火)  二つのバイロイトの第九――その1
2008/07/14 (月)  続・ハイフェッツの再来
2008/07/07 (月)  ハイフェッツの再来
2008/06/30 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――最終回
2008/06/23 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――6
2008/06/16 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――5
2008/06/09 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――4
2008/06/02 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――3
2008/05/26 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――2
2008/05/21 (水)  「フィガロの結婚」〜3人の風雲児が産んだ奇跡の傑作
2008/05/19 (月)  「フィガロの結婚」真実の姿――1
2008/05/12 (月)  クラシック 未知との遭遇――プロローグ

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